家庭科教員養成における実践参加型授業の試み

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抄録

目的:今日の教育課題に対処できる家庭科教員の養成のために、実践参加型の授業を含めてどのようなカリキュラムを用意したらいいのかについて検討するために、既存の授業科目に実践参加型を取り入れて実践してみることにした。方法:既存の中・高等学校家庭科教員養成の授業科目の内、?「保育学実習」(1年生・前期1単位・必修科目、金田先生担当)の最後に、学童保育所での実習を加える。?「家庭科教育特講」(2~4年生・後期2単位・選択科目、従来は元附属教諭による集中講義)において、まず、2003年10~12月の間、毎週1回(2時間程度)、計8回を目途に、大学周辺の小・中学校の家庭科の授業時間に、教諭の補助役として参加・観察を行う。毎回の実習後、一週間以内に報告書を小川まで提出する。その後、実習のまとめとして、2004年1月に、従来から本講義を担当してもらっていた元附属教諭による講義を受講する。<br>本報告では、?における、毎回の実習報告と全実習終了後のアンケート結果、元附属教諭による集中講義後の小レポートを資料として、実践参加型授業による学生達の変容の姿とともに、2003年度の取り組みの課題等を明らかにした。<br>結果:?の受講希望学生の大学の講義の空き時間と、受け入れ小中学校の家庭科の授業時間を調整した結果、2年生を中心とする計20名が、4小学校、2中学校の計6校に通うことになった。10,11月中、毎週1回の参加ということで、平均8回の実習経験ができると考えていたが、現実には4~7回の訪問という結果となった。また、参加した授業の内容は、被服製作と調理実習がほとんどである。<br>1.毎回の実習報告から:?子どもの見方が具体的になり、関わり方まで考えて行動する。?子どもとの関わり方について、迷いながらも積極的になり、新たな問題意識や自分の勉強不足を自覚し課題意識をもつようになる。?子どもを見て、関わり方を迷う中で教師の仕事に目を向け、理解する。さらに自分ならどうするかを考える。?自己有用感の喜びと教育学部生として教科専門や教職専門の学び方を考える、といった変容が認められた。<br>2.全実習終了時のアンケート調査結果から:?この度の参加実習において学んだことについての自由記述から、受講学生の学年とともに、参加したのが小学校か中学校かによって「学んだこと」の内容に、若干の違いがあった。2年生では「子どもの様子」だけの記述に留まる者がある、3年生で「家庭科の実習の設備や準備の大切さ」について書いている者がいる、中学校参加の場合に、家庭科の授業時間の少なさについての記述がある等である。?教育実習(実習?は2年生後期に1週間、実習?、?は3年生前期で計5週間)との違いについては、附属の子どもや雰囲気との違い、2ヶ月という期間があったので子どもの成長を感じたり、一つの課題の完成まで見届けることができたこと、子どもや教師の様子をよく観察できたこと等を挙げていた。?本授業のような、大学の授業の一環で小・中学校の授業に参加する機会については、「もっとある方がよい」とする者が20名中17名を占めた。残る3名は「大学の講義の合間に通うので、通うのが難しい」と記述し、「ない方がよい」とする者は皆無であった。<br>3.集中講義後の小レポートから:2年生(計12名)では、3名が、入学後、教職に就くことへの迷いがあったことを明確に記述した上で、今後の大学生活で家庭科の魅力について探す、教職もまたいいと、教職への志向が前向きに変化していることを述べていた。また、多くの学生が、授業をするために子どもの実態、一人ひとりの性格や得手不得手、関心や意欲等を知ることの重要性を記述していた。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680570476672
  • NII論文ID
    130006961226
  • DOI
    10.11549/jhee.47.0.31.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
    • KAKEN
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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