高等学校家庭科における格差社会の諸課題を考える学習の教育的効果  [in Japanese] The educational effects of the study concerning the issues of income inequality and poverty in high school home economics  [in Japanese]

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<B>目的</B><BR>  報告者らはこれまで、高校生を取り巻く社会環境の激変に対応したカリキュラム構築を目的として、継続的な実践的研究を行ってきた。高校生の労働と生活の実態調査を踏まえ、高等学校家庭科生活経営領域におけるカリキュラムを試案し、3校にてカリキュラムの一部を実施し分析を行った。これらより得られた知見をもとに、新たなカリキュラム(4時間)を構築した(以下、「改訂カリキュラム」と称す)。本研究の目的は、改訂カリキュラムの教育的効果を検討することにある。<BR><B>方法</B><BR>  改訂カリキュラムを実施する前後に、学習内容に関する用語の知識と社会保険や働き方などに対する考え方を問う事前チェック、事後チェックを実施した。具体的には「社会保険」、「生活保護」、「派遣切り」などの用語についての理解の程度、「社会保険」、「家族」、「仕事」などの自分にとっての必要性、将来の働き方などを学習の前後で比較した。さらに、改訂カリキュラム4時間分の学習におけるワークシートの記述内容を分析した。<BR> 対象者は、山形・千葉・神奈川の公立・私立高等学校4校1~3年生602名。カリキュラムの実施時期は、2010年10月~11月である。<BR><B>結果</B><BR>1)事前・事後チェックについては、「社会保険」、「医療保険」、「公的年金保険」、「雇用保険」、「労働者災害補償保険」、「生活保護」、「セーフティネット」、「非正規雇用」、「ワーキング・プア」、「派遣切り」、「ネットカフェ難民」の11項目について、理解の程度を「知らない(1点)」、「名前だけは聞いたことがある(2点)」、「名前も内容も知っている(3点)」、「内容について説明できる(4点)」の4択とし得点化した。事前チェックにおいて、得点が高かった項目は、「ネットカフェ難民(2.6点)」、「派遣切り(2.5点)」、「医療保険(2.4点)」、「生活保護(2.4点)」であった。得点が低かった項目は、「セーフティネット(1.6点)」、「ワーキング・プア(1.7点)」、「非正規雇用(1.8点)」、「労災(1.8点)」であった。事後チェックでは、すべての項目の理解度が上っているが、事前チェックにおいて得点の低い項目群の上昇率が顕著であった。また、「社会保険」、「お金や家などの資産」、「家族」、「友だち」、「仕事」、「自分をサポートしてくれる組織・ひととのつながり」の6項目の自分にとっての必要性について、生徒は「自分をサポートしてくれる組織・ひととのつながり」の項目を、他の5項目と比較して、低く捉えているという結果が出た。これよりネットワークやつながりが生活資源として重要であること、協働で社会のしくみを変えていくことを考察できるような内容や指導法の工夫がさらに求められることが明らかとなった。<BR>2)生徒の記述内容から、正社員とフリーターの家計の違いを考える授業では、生徒はフリーターという仕事に対する理解が不十分であったことを自覚し、正規労働と非正規労働の違いがわかったという段階にあった。しかし、次の社会保険の授業では、社会保障制度の重要性を理解する記述が見られ、さらに社会システムを見直す提案など発展的な記述もあり、学習内容を重ねる中で、生徒の理解が深まっていることが明らかとなった。また、視聴覚教材や生徒に身近な題材を使用したことで、生徒はこれからの自分の生活や進路とつなげて考えることができた。4時間の授業を通して「フリーターにはなりたくない。だから勉強しなければ」という思考になった生徒がいる一方で、万一フリーターなど社会的に不利な立場になったとしても、社会保障制度の活用法を知ることができて良かったとする生徒が多かったことも確認できた。<BR> 今後の課題としては、人とのつながりについて、NPОなど民間組織の活動が果たす役割など共助の理解を一層深める学習内容の必要性が明らかとなった。

Journal

  • Research abstracts on the annual meeting, regular meeting and seminar of the Japan Association of Home Economics Education

    Research abstracts on the annual meeting, regular meeting and seminar of the Japan Association of Home Economics Education 54(0), 49-49, 2011

    The Japan Association of Home Economics Education

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