被服製作に関する知識と技能の実態

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Knowledge and Skills about Dressmaking
  • the comparison with returnee students
  • 帰国生と一般生の比較

抄録

〈B〉目的〈/B〉〈BR〉  一般生のみ在籍している高校でも被服製作の授業を実施する時、生徒個々人の実技能力の差が大きい。以前勤務していた高校で帰国生に被服実習を実施した際、未学習者が多く在籍しており「糸通し」「玉どめ」「玉結び」の基礎から教えたことがある。生徒自身他の生徒の進度に遅れないように努力するものの、小学校や中学校で家庭科を学習していないことにより実技の習得率の差は大きいことが明らかであった。被服製作を指導するにあたり、被服製作に関する用語を一般生も知らないことが多い。帰国生と一般生との間に用語に関する認知度や用語を正しく理解しているかということを明らかにする必要があると考えた。〈BR〉  本研究では、帰国生と一般生の用語に関する認知度や理解度、技能の習得度の差を明らかにし、帰国生はどの部分が不足し、どのように補ったらよいか検討する。また、理解度や技能の習得度の差が大きい生徒が在籍するクラスで授業を行う際の指導方法を検討する。〈BR〉 〈B〉方法〈/B〉〈BR〉 調査時期:2010年2月~5月〈BR〉 調査対象:東京都内帰国高校生〈BR〉  帰国生119名、一般生92名にアンケート及び実技調査を実施した。帰国生の中で、現地校やインターナショナルスクールに通っていた生徒は、被服製作はあまり経験していない。日本人学校に通っていた生徒は被服製作を行っていた。小学校を日本で過ごしてから海外に渡航する生徒もいたため、家庭科の学習経験に大きな差がある(平成22年第53回日本家庭科教育学会発表)。〈BR〉 調査内容〈BR〉 【質問紙調査】〈BR〉 ・用具、布、縫製方法に関する知識、理解〈BR〉 ・知識の入手方法〈BR〉 ・衣生活に関する家庭での実践状況〈BR〉 ・海外生活について(通学校、滞在国、滞在年数等)〈BR〉 【実技調査】〈BR〉 ・なみ縫い、半返し縫い(玉結び、玉どめを含む)を各5分間で実施〈BR〉 〈B〉結果及び考察〈/B〉〈BR〉 1 裁縫用具に関する用語の認知度は、「へら」「チャコペン」「裁ちばさ み」「まち針」に関して帰国生と一般生との間に有意差が認められた。帰 国生の認知度の低さが明らかとなった。〈BR〉 2 布に関する用語の認知度は「縫い代」「みみ」に関して帰国生と一般生 との間に有意差が認められた。「バイアス」という用語は認知度が帰国  生、一般生共に低かった。〈BR〉 3 縫製方法に関する用語の認知度は「かがり縫い」「まつり縫い」「縦ま つり」「半返し縫い」「本返し縫い」「三つ折り縫い」「しつけ」「まち 針の打ち方」において帰国生と一般生との間に有意差が認められた。帰国 生の認知度の低さが明らかとなった。〈BR〉 4 「まち針の打ち方を知っている」と回答した帰国生44.5%、一般生   69.6%であるが、「まち針の正しい打ち方」の正解率は帰国生の方がやや 高かった。認知度と理解度には大きなギャップがあることが分かった。〈BR〉 5 「まつり縫いの縫い方を知っている」と回答した帰国生37.8%、一般生 77.2%であり、「まつり縫い」の正解率は一般生の方が高かった。「まつ り縫い」に関しては、縫い方を知っていると回答した生徒は、正しい縫い 方を知っているといえる。〈BR〉 〈B〉まとめ〈/B〉〈BR〉  帰国生は未学習者が多いため、裁縫に関する用語の認知度が低いことは当然であるが、一般生も同様に用語の認知度が低いものもあった。帰国生、一般生共に知っていると思っていても、実際回答することができないため、認知度と理解度には大きな差があることが本研究で明らかとなった。技能の認識度が低いため、定着していないことが想定できる。〈BR〉  生徒が用具の用語を理解していないため、教師が用具名のみ教えても、知識として定着することは困難であると考えられる。用具と名称を対応させながら実習の授業をすることを心がけると、生徒の認知度や定着度が上がると考えられる。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205596434688
  • NII論文ID
    130006963541
  • DOI
    10.11549/jhee.54.0.4.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ