「癌治療きついけど千羽鶴が完成したら家に帰れるやろうか。」

DOI
  • 東谷 成晃
    医療法人 共愛会 戸畑リハビリテーション病院
  • 入船 友紀子
    医療法人 共愛会 戸畑リハビリテーション病院
  • 都甲 幹太
    医療法人 共愛会 戸畑リハビリテーション病院
  • 中村 智子
    医療法人 共愛会 戸畑リハビリテーション病院
  • 辻 泰子
    医療法人 共愛会 戸畑リハビリテーション病院

書誌事項

タイトル別名
  • 作業が生活全般に変化をもたらした一症例

抄録

【はじめに】<BR> 60代女性が癌治療の為に入院。ADL改善目的でOT開始するが癌性疼痛の増強及び精神的低下等により生活範囲の拡大がみられず、ベッド上中心の生活となった。この症例に対し作業療法の一環として「千羽鶴作り」の作業活動を提供・支援したことがきっかけとなり、症例の心・身体に変化が見られ、QOL向上に繋げることができたので報告する。<BR>【全体経過】<BR> 10月中旬入院。3病日目:ST開始。 28病日目:OT開始。44病日目:折り紙開始。47病日目:千羽鶴作成開始・自室内環境変更。74病日目:外出。90病日目:千羽鶴完成。101病日目:自宅訪問。105病日目:外泊。116病日目:自宅退院。また入院中に合計59回のradiation(各部位)と合計7回の化学療法実施。<BR>【症例の変化・考察】<BR>第1期:折り紙導入前(介入当初)<BR> 入院当初、元々独歩自立が癌性疼痛によりベッド上生活となり、現病についての話題が大半を占め、自己の出来ないことに目が向くようになっていた。<BR>第2期:折り紙導入時(介入から約2週)<BR> 自室内にて短時間で出来、馴染みある活動として「千羽鶴」作成を開始。広告紙や用紙準備・一日の折る羽数は患者自身で決め、2~3日の完成分毎にOTが飾り付けを行い自室内に飾った。また自室内の環境を座位活動や移動がしやすいように変更した。<BR>第3期:心・身体の変化(介入から約4週)<BR> 「千羽鶴」作成で病態以外に目を向ける時間や、作業を通してスタッフや家族との関わりが増えた。また完成していく「千羽鶴」から満足感・達成感が得られると共に、他者から賞賛を受けた事で自己価値観の向上を認め、「癌治療きついけど千羽鶴が完成したら家に帰れるやろうか。」と発言内容にも変化が見られた。それに加え放射線や化学療法の治療効果もあり心理的苦痛の軽減や安心感が生まれたことで、院内を一人で散歩するなど生活範囲が拡大し徐々に生活習慣を取り戻していった。<BR>第4期:家族の変化(介入から約8週)<BR> 作品を通しての会話が増え、家族が症例の姿や能力を知り得たことで共に喜びや満足感を経験でき、リハビリ以外の時間で院内での散歩や家族・親戚と一緒に外出・外泊するなど外への時間を増やすことが出来た。これらの動きが在宅復帰にも繋がり、「孫を抱っこしたい」という新たな目標を掲げて笑顔で退院となった。<BR>【まとめ】<BR> 今回「千羽鶴」の余暇活動がきっかけとなりQOL向上から機能・能力の回復に繋がっていった。癌患者様へのリハビリには多面的な介入が必要であるが、作業活動を提供・支援することは患者様に目標ある生活を獲得させ、生活全般に変化をもたらす一助になると言える。

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キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205623819904
  • NII論文ID
    130006984075
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2009.0.14.0
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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