頚部可動性が腰痛症患者に及ぼす影響

DOI
  • 竹内 明禅
    医療法人 慈圭会 八反丸病院 リハビリテーション部
  • 佐田 直哉
    医療法人 慈圭会 八反丸病院 リハビリテーション部
  • 五十峯 淳一
    医療法人 慈圭会 八反丸病院 リハビリテーション部

抄録

【はじめに】<BR>  腰痛症患者は臨床で最も多く治療する機会があり、その中で頸部及び胸腰部の回旋方向への可動域制限を認める場合があり、頸椎の環軸関節(以下、C1/2)を治療し可動性を改善することで症候の緩和を認める経験をする。今回、腰痛症患者において頚部可動性と胸腰部可動性との関連性を調査し、C1/2治療後の症候の変化及び胸腰部の可動性の影響について研究を行ったので報告する。<BR> 【対象と方法】<BR>  腰痛群(以下、P群)は外来患者20名(男性6名・女性14名)、平均年齢25.7歳±11.1とし、対照群(以下、C群)は健常成人20名(男性9名・女性11名)、平均年齢30.1歳±7.72の2群とした。<BR> 1.測定器具は東大式角度計を用いて頚部のa.屈曲b.伸展c.回旋d.側屈、胸腰部のe.回旋のROMを測定し、c~eに関しては左右差を算出して2群間を対応のないt検定にて比較検討した。<BR> 2.頸部への治療技術はC1/2回旋に対する接近滑り法を実施し、P群の治療前後のa~eを測定し対応のあるt検定にて比較検討し効果判定を行った。<BR> 3.P群において治療前後でのeに対するa~dの相関係数と治療前後のVisual Analogue Scale(以下、VAS)に対するa~eとの関連性をピアソンの積率相関分析を用いて分析した。<BR> 【結果】<BR> 1.C群と比較してP群のbが有意に減少(p<0.01)、c・d・eが有意に増加し (p<0.01・p<0.01・p<0.01)、頚部及び胸腰部の可動域制限を認めた。<BR>2.P群において治療前と比較して治療後にc・d・eが有意に減少し(p<0.01・p<0.01・p<0.01)、可動性が改善した。<BR> 3.P群において治療前と後のcはeに対して高い相関を認め (r=0.66・r=0.62)、頚部の回旋制限が大きいと胸腰部の回旋制限も大きく、頚部の回旋制限が改善すれば胸腰部の回旋も改善した。また、治療前のcはVASに対して高い相関を認め(r=0.52)、頚部回旋制限が大きければVASも大きく、治療後のc・eはVASに対して高い相関を認め(r=0.65・r=0.76)、頚部・胸腰部の回旋可動性が向上すればVASは軽減した。<BR> 【考察】<BR>  結果1よりWhite, Panjabiが提示する脊柱の可動範囲から頸椎~胸腰椎の骨運動と関節内運動は四肢関節における運動とは異なる点が多く、動く骨体が軟骨で結合されている為、動きが僅かしか起こらない。しかも、運動分節は上位から下位に向かってドミノ倒しのように順番に動きが起こる特徴を考慮すると上位または下位からの連動性に問題が生じた為だと推測される。<BR>  次にC1/2回旋に対する接近滑り法は頸椎のROMを総合的に改善することができ、特に回旋方向への可動性を向上することで頚部可動性の左右差を軽減し、胸腰部の可動性を増加させ、さらには疼痛の軽減も図ることが可能となった。これは治療対象器官を関節に設定したことで、Mennellが定義する関節機能障害の存在が推測でき、一連の脊柱のROM制限と疼痛の一要因が関節機能障害の関与ではないかと考えられる。<BR>  今回の研究では、脊柱のROM制限と疼痛の関係が密接に関わっていることが分かり、特に頸部回旋運動、胸腰部回旋運動、疼痛との関連性が高いことが示唆された。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205625301248
  • NII論文ID
    130006985489
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2010.0.348.0
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ