野生オマキザル群における色覚多型の中立性検定

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  • A neutrality test of color vision polymorphism in a social group of wild capuchin monkeys

抄録

新世界ザルの色覚には種内変異があることが知られており、一般にオスは2色型でメスは2色または3色型である。これはX染色体性1座位の赤-緑視物質遺伝子に多型があるために生じる。色覚多型は種を越えて新世界ザルのほとんどの属にみられることから、何らかの平衡選択により維持されてきたと考えられるが、新世界ザルの採食品目には隠蔽色系が多く、3色型色覚の優位性は必ずしも明瞭ではない。また、社会集団レベルでの色覚多型性に関する知見も乏しい。そこで本研究は新世界ザルの色覚多様性への平衡選択を検証するために、野生集団において赤-緑視物質遺伝子の多型性を他の遺伝子との比較において評価することを目的とした。<br>[方法] これまでにコスタリカ共和国サンタロサ国立公園のシロガオオマキザル(Cebus capucinus)の野生群に対し、糞DNAから赤-緑視物質遺伝子の遺伝子型を判定している。本研究ではそれにより色覚多型が実証された1群(約 20頭)を対象に赤-緑視物質遺伝子のイントロンを含む約1.8 kb及び比較対照として4つの中立配列それぞれ約0.5 kbを群れのほぼ全個体について配列決定し、塩基多様度(2配列間の平均塩基相違数:Π)と塩基多型度(全配列中の多型サイト数(S)を標本数で規定される関数(a1)で割った値:S/a1)を求めた。これらの値の赤-緑視物質遺伝子と中立対照との相違をコアレッセンスシミュレーションで評価し、さらにΠとS/a1の差をTajima's Dテストで評価した。<br>[結果と考察] 赤-緑視物質遺伝子のΠとS/a1は中立対照のそれらより有意に大きいことがわかった。またTajima's Dの値も赤-緑視物質遺伝子では有意に正となるのに対し中立対照では0と有意差がなかった。これらの結果は赤-緑視物質遺伝子の多型性が中立変異や集団史効果では説明できず、平衡選択によって維持されていることを意味した。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205634655744
  • NII論文ID
    130006997094
  • DOI
    10.14907/primate.22.0.35.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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