筋機能推定のための形態学的アプローチ

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タイトル別名
  • How to evaluate muscular function by means of the morphological analysis.

抄録

我々が霊長類学の枠組,すなわちヒトに至る人類進化の過程を知ることを見据えて筋の形態分析を行う目的は,その筋の機能(function)を知ることにある。肉眼解剖学的な定性的観察は筋の作用(action)を示すことはできるが,実運動時の機能を探るためには限定的な知見しか示してくれない。筋電図法を肉眼解剖学的検索と同時に行なうことはこうした制限をある程度取り除いてくれる。しかしながら,「機能を知る」という観点からは精緻な運動計測手法と組み合わせる必要があり,霊長類の運動実験でどの程度まで「精緻」性が確保されるかという点には疑問がある。具体的には,体肢セグメントの回旋運動や体幹全体の運動について,正確なデータを得ている実感がない。このような状況の中で,筋電図学的研究を基礎におきながら,筋配置の問題に取組んできた。一旦は筋線維構築の問題から筋の機能分析を行う手段を模索したが,その過程で筋線維構築そのものが変異に富むため,一般化することが困難であることに気付いた。現実の筋線維構築は複雑な三次元的構造であって,そのモデル化は形態学者の手に余る。機能分析の最終的な目的に関しては筋全体の出力と力の方向こそが重要なのであって,筋線維構築はミクロ的にすぎると考えた。そこで,ある出力を持った筋を骨構造に対してどのように「貼りつける」かという筋配置の問題に取組んだ。この試みは一定の成果をあげたと考えているが,筋電図の解釈のような制御系の問題を解決するには至らなかった。そこで,筋内の機械的受容器である筋紡錘の配置の問題に取組んだ。この計画は現在も継続しているが,多大な時間を要するために現状では限定的な知見しか得られていない。次には,関節そのものの運動制限機構の実態を知ることが,精度的に不十分な運動計測を補完することになると考え,現在は靭帯配置が手がかりになると考えている。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680611887488
  • NII論文ID
    130006997636
  • DOI
    10.14907/primate.25.0.107.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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