脱離イオン化法におけるペプチドのイオン生成量を支配する因子の協同効果

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  • Cooperative Effect of Factors Governing the Molecular Ion Yields in Desorption/Ionization Mass Spectrometry

抄録

ペプチドマスフィンガープリンティングを使うタンパク質同定では,酵素消化によって生じたペプチド断片をいかに効率良く質量分析でイオン化するかが同定精度に影響を与える.しかし,ペプチドのイオン生成量は質量だけでなく,構成アミノ酸の性質やアミノ酸配列に大きく影響される.ここでは,20種類のアミノ酸および配列の僅かに異なる一連のペプチドを使い,高速原子衝撃(FAB)およびマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)質量分析におけるイオン生成量と構成アミノ酸の性質との関連を調べた. ペプチドのイオン生成量をアミノ酸の性質と関連づけるために,アミノ酸のイオン生成量と物性との関連を調べた.物性にはプロトン親和力(PA)と疎水性度が選ばれた.FABでは,PAとイオン生成量は良好な直線的相関を示したが,疎水性アミノ酸(Leu, Ile, Val)は直線から大きく外れ高いイオン生成量を示した.また,疎水性とイオン生成量との相関も比較的良好であったが,塩基性アミノ酸(Arg, Lys, His)はイオン生成量の高い方向へ,芳香族アミノ酸(Phe, Tyr, Trp)は低い方向へ外れた.MALDIでは,PAとイオン生成量は良好な直線的相関を示したが,Lysのみがイオン生成量の低い方向へ外れた.疎水性とイオン生成量との相関はほとんどなかった. ペプチドのイオン生成量は,FABもMALDIも個々のアミノ酸の物性の協同効果として得られた.塩基性アミノ酸Argの存在はイオン生成量を高めるのに必須であったが,FABでは2残基以上のArgの存在はイオン生成量を低下させた.FABでは疎水性アミノ酸(Leu, Ile)の存在はイオン生成量を高めたが,MALDIでは逆に低下させる傾向を示した.MALDIでは,芳香族アミノ酸(Phe, Tyr)の存在はイオン生成量を高める傾向を示した.結果として,ペプチドのイオン生成量を構成アミノ酸のイオン生成量および物性から予測することは困難であり,ペプチドに特有の構造と物性を見出す必要のあることがわかった.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680612555008
  • NII論文ID
    130006998400
  • DOI
    10.14889/jhupo.2005.0.98.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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