融合プロテオミクスによる神経系腫瘍抑制遺伝子産物の細胞内シグナルの解析

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タイトル別名
  • Analysis of cellular signal transduction of neuronal tumor suppressor gene product by proteomic strategy

抄録

神経系腫瘍抑制遺伝子産物(NF1蛋白;neurofibromin, NF2蛋白;merlin)の細胞内機能を、プロテオミクスの手法を用いて生化学的、細胞生物学的に解析している。今回、NF1高変異部位であるC末端部位、及びNF2高変異部位であるN末端部位に対する結合タンパク質群をiTRAQ法およびTAP法を用いたProteomic affinity cellular mappingにより網羅的かつ定量的に同定し、NF両蛋白質を介する細胞内シグナルネットワークを解析した。また、NF1/NF2 SiRNAを用いた細胞内NF1・NF2蛋白質のノックダウンを行い、これらの蛋白質の発現抑制による細胞内シグナルの変化を生化学・形態学的に検討するとともに、ノックダウン細胞内特異的変動蛋白質群をProteomic differential displayによって解析した。NF1蛋白質に特異的に結合する蛋白質群として、Neuron Regulators、リン酸化・脱リン酸化酵素群、アダプター分子群、細胞骨格系・細胞接着系制御分子群、蛋白質合成関連分子群など28種類の蛋白質が同定された。NF1結合蛋白質群中でneuronのaxon形成に関わるcollapsin response mediator protein 2(CRMP2), tumbulin, coffilinとのinteractionに注目したところ、これらの分子はPC12細胞のNGF刺激後、NF1蛋白質を介してGSK3B及びRho kinase、LIMKinaseによるリン酸化が相互制御されることによってneurite の形成と伸展に関わっていることがNF1ノックダウン細胞にて証明された。また、NF2蛋白質ノックダウン細胞においても、細胞運動能、細胞接着能、骨格系の異常が認められ、DNA修復分子群、アポトーシス関連分子群、細胞骨格系・細胞接着系制御分子群、Neuron Regulators、細胞周期関連分子群を含む約25種類のNF2結合蛋白質群が同定された。NF1蛋白質とNF2蛋白質に共通するNeuron Regulatorや細胞骨格制御因子などの結合蛋白質群の存在や、両分子のノックダウンによる形態変化と、それに伴う変動蛋白質分子群に共通性があることから、これら共通分子を介したシグナルの異常がNF1及びNF2に類似する病態に関連する可能性が考えられた。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680612585984
  • NII論文ID
    130006998439
  • DOI
    10.14889/jhupo.2006.0.45.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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