冷温帯天然林におけるブナ粗大枯死材の分解に関わる菌類群集の動態と機能
書誌事項
- タイトル別名
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- Fungal decomposition of coarse woody debris of beech (<I>Fagus crenata</I>) in a cool temperate natural forest
抄録
菌類は,倒木や落枝といった枯死材の細胞壁を化学的に分解できることから,森林の物質循環や土壌腐植形成を介して,森林生態系の維持に重要な役割をはたしていると考えられる.では、実際に野外で分解中の枯死材に定着している多種の菌類の中で,どの菌類がどういった分解機能を担っているのだろうか?本研究では、植物細胞壁を構成する有機物の大部分を占めるリグニンとホロセルロースに注目し,冷温帯の優占樹種であるブナの粗大枯死材の分解過程を菌類群集の分解機能から説明することを目的とした.調査は,京都府北部のブナ天然林にて行った.はじめに,ブナ枯死材の分解段階に沿った材の物理化学性(密度・含水率・有機物組成)の変化パターンを明らかにした.次に,材有機物の機能的な分解者と考えられている担子菌や子嚢菌(大型菌類)および,比較的材分解力は弱く材の機能的な分解者とは考えられていないが,材に軟腐朽を引き起こすことがある不完全世代の菌類や接合菌(微小菌類)の発生パターンを明らかにし,材の物理化学性との対応関係を明らかにした.さらに,ブナ枯死材に発生した菌類の分離菌株を用いて,純粋培養下における材分解試験を行った. 結果,ブナ粗大枯死材の分解過程では,まずツキヨタケをはじめとする白色腐朽性の大型菌類によるリグニン・ホロセルロース同時分解が起こり,その後,Trichoderma spp.をはじめとする軟腐朽性の微小菌類によるホロセルロース選択分解が起こることによりリグニンが蓄積し,腐植化することが明らかになった.最終的に蓄積するリグニンの量や濃度は,土壌に蓄積する腐植の量や質を介して,森林生態系の生物多様性や土壌養分条件に影響することが予想される.今後,樹種や環境条件によって白色腐朽・褐色腐朽・軟腐朽といった材の腐朽型やそれに関わる菌類の材分解に対する相対的重要性がどう変化するかを明らかにすることにより,森林生態系の物質循環や土壌発達の仕組みに関して,局所レベルで新たな知見を提供できるだろう.
収録刊行物
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- 日本菌学会大会講演要旨集
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日本菌学会大会講演要旨集 52 (0), 31-31, 2008
日本菌学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680637157120
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- NII論文ID
- 130007004639
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可