雄性両性異株マルバアオダモ(モクセイ科)の個体群構造と繁殖成功

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タイトル別名
  • The population structure and reproductive success of the androdioecious tree, Fraxinus sieboldiana Bl. (Oleaceae)

抄録

個体群構造の解析は個体群維持の機構を解明するばかりではなく、繁殖様式の進化・維持の解明にも有効な手段となっている。雄性両性異株という性型はまれな性型であり、その進化・維持機構についての生理学的・遺伝学的な研究はここ10年の間に進んできている。雄性両性異株では雄株は花粉生産のみに関与し、両性株では花粉・種子の両方の繁殖に寄与することから両者に繁殖コストの差異があり、そのことが野外集団での両性型のサイズ構造、空間構造に違いをもたらしていることが予測されるが雄性両性異株での個体群構造の解析をおこなった研究はほとんどない。 そこで本研究では、大阪府柏原市大阪教育大周辺緑地(柏原集団)の明るい二次林に設置したマルバアオダモの優占する40×60m2のpermanent plotにおいて、(1)個体群構造特にサイズ分布、繁殖開始サイズ、開花フェノロジー、RGRに性型間での違いがあるのかの調査をおこなった。さらに、(2)位置情報からRiplyのK(t)関数の修正関数L(t)を用い、性型間での空間分布に違いがあるのかを解析した。また、また比較のために(1)に関しては、和歌山市和歌山大周辺緑地(和歌山集団)の常緑樹が優占する二次林のマーク個体においても調査を行った。 その結果、柏原集団では開花フェノロジー、RGRには性型間での有意な差異はみとめられなかった。ただし和歌山ではマーク個体の開花に著しい年隔差があり、光条件に制約のある環境下では性型間で開花頻度に差異がある可能性が示唆された。またサイズ分布の解析からは開花開始サイズに性型間に差異があることが示された。空間構造はサイズクラスが大きくなるにつれ集中分布からランダム分布へと移行する傾向がみとめられた。これはこの植物が風散布種子であり、実生のセフティサイトは親木の下や吹きだまりのような地点に集中するためと考えられる。一方、開花個体では雄株も両性株も12mの距離までは集中分布しそれを超えるとランダム分布へと移行していく傾向がみとめられた。性型間には同所的に分布する傾向が認められ、性型間での分布パターンの違いは認められなかった。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680666008960
  • NII論文ID
    130007010160
  • DOI
    10.14848/esj.esj52.0.314.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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