Female control of paternity in the cooperatively breeding cichlid <i>Julidochromis transcriptus</i>

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  • 共同繁殖するカワスズメ科魚類<i>Julidochromis transcriptus</i>におけるメスの父性操作

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近年,メスによる子の父性操作が,昆虫や鳥類などの体内受精を行う動物で報告されている.体外受精を行う魚類では,2オスと1メスが共同繁殖を行うカワスズメ科魚類において,メスによる子の父性操作の可能性が示唆されている.しかし,その詳細は全く分かっていない.本研究では,共同繁殖を行う基質産卵型のカワスズメ科魚類Julidochromis transcriptusを用いて,水槽実験により,メスによる子の父性操作を検証することを試みた.野外観察から,この魚はクサビ形の巣で繁殖し,協同的一妻多夫の小オスは巣幅の狭い奥で,大オスは巣幅の広い入り口付近で放精するようである.このことから,メスは産卵する位置,つまり産卵位置の巣幅を変化させることで,メスが父性操作をしている可能性が考えられる.そこで,まずクサビ形の巣を作成し,大オス・小オス・メス(トリオ)で飼育・繁殖させて,産卵位置とそれぞれのオスの受精割合について検討したところ,巣幅の狭い位置で産卵した場合は,小オスの受精させた子どもの数が多かった.これにより,メスは産卵位置を選ぶことで父性操作が可能であると考えられる.さらに,産卵位置の巣幅が狭い場合に,小オスの保護行動の頻度が増加したことから,メスは小オスに受精させることで,小オスから保護の手伝いをより多く受けていることが示唆された.また,ペアでも同様に飼育・繁殖させると,ペア飼育で得られた卵塊はコンパクトに産まれているのに対し,トリオ飼育の卵塊は幅広く産まれていた.このことから,トリオのメスは2オスが受精できるように産卵位置や分布を操作しているようである.以上のことから,J. transcriptusのメスは受精を操作している可能性が高いと考えられる.

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390001205689918208
  • NII Article ID
    130007011075
  • DOI
    10.14848/esj.esj52.0.111.0
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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