東日本太平洋側におけるブナ及びブナ林の分布_-_八溝山地と阿武隈山地について_-_

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タイトル別名
  • The distribution pattern of Japanese beech, Fagus crenata Blume in Mts. Yamizo and Mts. Abukuma

抄録

北関東_から_東北にかけての太平洋側の地域では、気候的極相林としてのブナ林の発達する領域は、元々、日本海側の地域と比べて水平的にも垂直的にも狭いと考えられ、また古くからの開発によって、すでに大半が失われてしまっているのが現状である。一方、これらの地域では、近年、従来の学説によって予想されるよりも低海抜の地に、ブナの混じる小林分が点々と分布することが報告されているが、これら低海抜地のブナ林については、1)ブナは種としては普通種であること、2)二次林であることも多く原生林としての希少性が認められない、などの理由で十分な保護が図られず、また、分布情報さえ十分には把握されていないのが現状である。しかし、分布限界付近に点在するこれらの群落こそ、植物群落の分布や歴史を考える上で最も重要で、歴史の生き証人ともいうべき群落である可能性がある。また気候変化によって、真っ先に影響を受けて存続が危ぶまれるのも、このような群落である。特にブナの場合は、日本の森林帯の主要樹種であり、分布下限付近の群落の変化は植生帯全体の変化に大きく影響する。これらのことを背景とし、上記の地域のブナ及びブナ林の分布について、文献や標本調査、聞き込みによってデータベースを作成し、群落の状態を現地調査によって明らかにする研究を行っている。今回は現地調査を終えた八溝山地と阿武隈山地について報告する。これまでに1)ブナはWI=85を越えてWI=105付近まで分布する地域があり、また分布下限のWIは地域ごとにかなり異なる、2)ブナの分布下限はスダジイまたはカシ類の分布と重複、または接する場合が多い、3)ブナは高海抜地では“ブナ優占林”を形成するが、低海抜域ではシデ類やイヌブナ、モミ、カシ類などに混交して、主に尾根や上部斜面にパッチ状に出現する、などが明らかとなった。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680666875520
  • NII論文ID
    130007011517
  • DOI
    10.14848/esj.esj51.0.406.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
    • KAKEN
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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