ハビタットスペシャリスト樹木の成長はハビタットによって異なるか?
書誌事項
- タイトル別名
-
- Dose diameter growth differ between different habitats in rain forest trees?
抄録
近年、大面積調査区を用いた樹木個体の空間解析によって、熱帯雨林樹種の多くが特定のハビタットに偏って分布する「ハビタットスペシャリスト」であることが明らかとなってきた。種の分布が特定のハビタットに偏っているのは、それぞれの種の死亡率や成長速度がハビタットごとに異なっているためと予想される。しかし、熱帯雨林樹種の動態がハビタットからどんな影響を受けているのか、実際のところはよくわかっていない。そこで、マレーシア、サラワク州ランビル国立公園に設置した大面積調査区(52ha)のデータを用いて、各樹種の直径成長が地形ハビタットとどんな関係にあるのかを検討した。 各樹種の平均直径成長はハビタットの影響を組み込んだゴンペルツ成長モデルに従うと仮定し、調査区に200個体以上が成育していた381種について解析を行った。その結果、208種(55%)で標高、傾斜、斜面凹凸度のいずれかの地形要因が直径成長に有意に影響を与えていた。モデルから推定された直径1cmの個体の平均成長速度は、地形条件にかかわらず、谷をハビタットとする種>尾根をハビタットとする種>斜面をハビタットとする種の順に低下した。一方、ハビタットが平均成長速度に与える影響は、谷をハビタットとする種で特に大きく、尾根をハビタットする種では小さかった。そのため、谷ではハビタットの違う種群の間で成長速度が有意に異なっていたが、尾根では成長速度に有意な差は認められなかった。つまり、尾根ではそこをハビタットとする種の成長が特に優れているわけでないが、谷ではそこをハビタットとする種ほど成長が良いことになる。肥沃で水分も豊富な谷では、効率よく成長することが重要であり、貧栄養で乾燥の厳しい尾根では、成長よりも乾燥や賓栄養への耐性がより重要なのかもしれない。
収録刊行物
-
- 日本生態学会大会講演要旨集
-
日本生態学会大会講演要旨集 ESJ52 (0), 460-460, 2005
日本生態学会
- Tweet
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1390001205691321088
-
- NII論文ID
- 130007013396
-
- データソース種別
-
- JaLC
- CiNii Articles
-
- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可