Research on effect of thermal environmental mitigation by heat circulation through Tokyo Bay

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  • 東京湾を媒体とした熱循環による暑熱緩和効果に関する研究

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<BR> 従来ヒートアイランド対策は市街地等陸上での対策がほとんどであったが、これらは巨額の投資にもかかわらずその効果は限られており、効果を顕著なものとするためには相当規模の施工が必要となることが明らかになっている。例えば東京23区において、1)建物・事業所排熱を50%、2)自動車交通排熱を20%削減し、3)全舗装面を50%透水化(草地・裸地化)、4)全建物屋上を50%緑化したとしても、都心3区の真夏日の日最高気温は約1℃しか低下しないことが環境省の委員会における検討で明らかとなっている。これらの既往対策のみで直面する暑熱問題を解決するには時間を要し、即時性や更なる効果を期待できる抜本的な対策が必要とされている。<BR>  首都圏では、典型的な真夏日でも東京湾からの海風が都心に進入するため、湾水温を現状より低く維持できれば、海風はより冷涼で強くなり、都心の冷却効果や換気効果が促進されるものと考えられる。これらの背景から、海水面冷却によるヒートアイランド対策の検討を実施し、海水面温度を数℃下げる手段として、海洋深層水を東京湾奥の温排水の影響が顕著な区域へ導水し、放水・攪拌することが有効であると考えられる。しかし、零細多数な東京湾の漁業主体との調整や、表層を低温に維持するための湾内における鉛直混合維持対策の必要性など、いくつかの課題も浮き彫りとなっている。本研究では、海洋深層水導水による東京湾の水面温度低減方策の可能性をさらに具現化するための検討を行い、ヒートアイランド現象緩和方策とするとともに、海洋深層水導水による東京湾の浄化再生について提案として概要をとりまとめた。<BR>  東京湾の水質浄化については、70年代以降の水質汚濁防止法の施行などにより、水質の改善傾向は見られるものの、現状において赤潮・青潮等が発生し、生物の生息状況や環境基準達成状況等からみる限り、水環境の改善が十分に図られているとはいいがたい。また有識者へのヒアリングにより、海洋深層水の水質特性による生態系への影響、漁業者との調整の必要性、導水量と対象区域の設定についての考え方などが指摘されている。<BR>  東京都では主な対策技術として、屋上緑化、壁面緑化、高反射性塗装、保水性建材、保水性舗装が推進されている。東京都のクールルーフ事業(補助上限2千万円、補助率50%)は、千代田区、中央区、港区などの都心7区で実施されている屋上緑化等の事業であるが、その事業費を試算すると、7区の都市計画区域の内、戸建て住宅が主体と考えられる第1種、第2種低層住居専用地域を除いた都市計画区域面積(約9,700ha)の30%を建築物の屋上面積と仮定し、整備費単価を2万円/m2とした場合、約5,800億円の整備費が必要となる。また東京都23区について推計してみると、都市計画区域の内、上記と同様に第1種、第2種低層住居専用地域を除いた都市計画区域面積(約46,000ha)の30%を建築物の屋上面積と仮定し、整備費単価を2万円/m2とした場合、約2兆7千億円の整備費が必要となる。保水性舗装については、東京都内の都市計画道路面積は概算で約7,200haであり、整備費単価を2万円/m2と仮定すると、整備費は約1兆4千億円になるものと推計される。<BR>  海洋深層水利用学会の資料によると、現在日本全国で16箇所の海洋深層水取水分水施設が設置されている。それらの取水能力には数百~1万3千m3/日と幅があり、2千~4千m3/日程度の施設が最も多い。有識者へのヒアリングにおいても、現状の海洋深層水取水施設における技術で対応は可能との意見であったが、本研究において実施する導水では、設定対象範囲を考慮した場合、取水量は数十万~百万m3/日程度が必要となる。それを満足する導水方式について、経済産業省等での検討を行った事例を参考とした場合、導水施設(揚水量100万m3/日)の建設費は約25億円/kmとなる。本研究における導水距離を、東京湾から湾奥までの約60kmとすると建設費は約1,500億円となる。付帯施設等を含めて約2倍と考えても約3千億円となり、先に示した既往の緑化対策等にくらべて実現性は高いといえる。放水方式については、海洋深層水の栄養塩類濃度や塩分濃度等を考慮する。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680669403520
  • NII Article ID
    130007015250
  • DOI
    10.14866/ajg.2008s.0.89.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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