神田川・石神井川流域における1974年以降の都市型水害の変遷

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  • Historical urban flood disasters in Kanda and Shakujii river basins in the last 30 years.

抄録

1.はじめに<BR>  東京都区部の山手台地では、戦後の住宅地の急増により都市型水害が発生するようになった。加えて、最近30年間において50mm/hを超えるような豪雨が増加傾向にあり、予想をはるかに超えるような水害が発生している。山手台地を流れる神田川流域や石神井川流域では、1960年代から都市型水害に対する研究が行われ、様々な水害対策も行われてきた。しかし、いずれの流域でも、流域全体を対象とした都市型水害の研究が1980年代以降は行われていない。また、水害対策の効果については、個々の水害対策箇所において研究が行われているが、流域全体を対象とした長期的な検討がおこなわれていない。そこで本研究では、流域が隣接し、浸水域の発生箇所、発生年代、水害対策の進展の過程に大きな違いのある神田川・石神井川両流域を対象とした。両流域を対象として1974年から2002年の期間において、浸水発生域の変化と水害対策の進展過程との関係を検討した。なお細密数値情報(10mメッシュ土地利用)の首都圏版1974から1994によると、この期間には両流域において著しい土地利用変化が見られないため、その影響を考慮することなく分析が行えた。<BR> 2.調査方法<BR>  神田川・石神井川両流域における浸水地域は、東京都建設局発行の『水害記録』を、水害対策のうち下水道幹線の整備の進展については東京都下水道局発行『下水道事業概要』を、下水道支線の整備の進展については『東京23区の下水道』を、河川改修と地下貯留施設の整備の進展については東京都第三建設事務所発行『事業概要』を使用した。それらをGIS(MicroImages社製.TNTmips)を用いて数値地図化した。得られたデータを谷底低地と台地に分けたが、得られた浸水域と水害対策のデータの精度が粗く、『1/25000土地条件図』の精度と合わなかった。そのため文献をもとにして谷底低地を河道から両幅200mの範囲としてGISで作成した。<BR> 3.結果と考察<BR>  (1)両流域における浸水域の変化1974年から1993年までは、谷底低地内に面積規模の大きな浸水域が多数発生し、台地上に小面積の浸水が点在していた。しかし1994年以降、谷底低地の浸水域は著しく減少し、台地上の小面積の浸水は依然として点在していた。このことは、両流域の水害対策が大規模な浸水が発生していた谷底低地から進み、小規模に浸水が発生していた台地上では遅れたことと対応している。また、1999から2002年に発生した浸水域は、1973年以前に整備された排水機能の小さい下水道幹線の周辺に多く発生していた。(2)神田川流域と石神井川流域の比較神田川流域の浸水対策は1974年以前から進んでいたが、1974年以降の進展が遅く浸水域の減少は多くなかった。逆に1974年以前の石神井川流域の浸水対策は神田川流域に比べて遅れていたが、1974年以降の進展が著しく浸水域の減少も急速に進んだ。そのため、1984年以降は石神井川の浸水域は大幅に減少したが、神田川流域の浸水域は石神井川流域と比べると多く発生していた。1979年から1993年には、本来は浸水発生を現象させるはずの河川改修によって、神田川と善福寺川の合流付近に新たな浸水域が発生していた。これは、河川改修が下流より先に上流で整備されたことが原因である。両流域の浸水対策の違いと河川改修の実施順序の逆転による浸水は、長期展望を持った計画的な浸水対策の重要性を示唆する。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680669804800
  • NII論文ID
    130007015810
  • DOI
    10.14866/ajg.2006f.0.15.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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