震災発生のメカニズム

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タイトル別名
  • Mechanism of Earthquake Disaster
  • A Case of Chuetsu-earthquakes in 2004, Niigata pref., Central Japan
  • 2004年 新潟県中越地震の場合

抄録

視点 2004年中越地震を事例に、震災発生のメカニズムを検討するのが、本報告の目的である。中越地震は1995年に発生した兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)と同じ直下型地震であった。しかし、そこ中越地震の震災は共通点を持ちながらも、いくつかの点で、阪神・淡路大震災と異なっていた。それについて検討をしたい。研究方法 1)気象庁・日本気象協会の震度1以上地震について、発生パターンを検討。 2)地震直後、ヘリコプターによって被災地の概要を把握。 3)現地踏査。 4)震災発生メカニズムの検討。結果 1)10月23日に発生した中越地震の本震以前に、中越地方では、9月7日19時43分に震源の深さ1km、M2.4をはじめ多くの前震と考えられる地震が発生していた。M4.0以上の地震については、しばしば同様の前震がみとめられ、今後、地震予測に利用できる可能性がある。 2)北米プレート周辺で発生する地震の場合、一定の地震発生がみとめられる。そのひとつとして、根室沖・釧路沖_-_十勝沖_-_岩手沖_-_宮城沖_-_福島沖_-_茨城沖_-_房総沖と地震が発生する。そして、もうひとつは、宮城沖までは同様であるが、そこから中越_-_秋田沖_-_北海道西方(もしくは西方沖)と展開する。 3)中越地震では、平野域において、比較的被災の程度が軽かった。これは、人口密度が低いために、集落の大半は自然堤防や段丘面に立地しており、旧河道や後背湿地に立地するものが少なかったことに起因すると考えられる。平野域の被害は、老朽化した住宅や悪い土地条件の場所に限定的であった。また、この地域は豪雪地帯であり、それに対応した家屋の構造となっていたことも、災害を小さくした原因であったと考えられる。 4)丘陵域では地すべりや斜面崩壊にともなう被害が顕著であった。丘陵域は、鮮新_-_更新統の砂岩や泥岩からなる魚沼層群から構成されている。このため、丘陵域は、典型的な地すべり地域となっており、棚田地域を形成していた。棚田の開発は、地すべり地域の特性をうまく利用したものであり、この段階では、人間は自然環境にうまく適応して生活を行なっていたということができる。 5)この状況を変更するのに大きなインパクトを持ったのが、1985年に開通した関越自動車道であった。たしかに、それ以前においても、水田漁業として鯉の養殖は行なわれていたけれども、その規模は大きなものとはいえなかった。ところが、関越自動車道路の開通によって、東京へ、関東へ、そして海外へと市場が広がることによって、棚田は爆発的に養鯉池へと姿を変えていったのである。養鯉池の掘削により、地下水環境は変化し、地すべりがより発生しやすい環境となったと考えられるのである。その背景には、バブル経済期に、より収入が多い生業を選択するという住民の考えが反映していた。 6)2004年秋に中越地方地方を襲った集中豪雨や台風23号の影響により、丘陵地域は、充分すぎるほど地下水により満たされており、仮に、中越地震が発生しなかったとしても、ある程度の地すべり被害は発生したであろうと考えられる。 7)魚沼丘陵域の地すべり地帯において、地域の復興策として養鯉業が復活するようなことになった場合、再び、大雨や地震をきっかけに地すべり被害が再発すると考えられ、注意が必要である。 8)阪神・淡路大震災の場合には、経済の高度成長期に都市に集中した過剰な人口を収容するために、土地の履歴を無視した一戸立て住宅の建設が、被害を深刻にした。それに対して、中越地震被害の場合は、バブル経済期を中心にして、土地の履歴を無視した養鯉池の掘削が、被害を大きくしたといえよう。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680669838208
  • NII論文ID
    130007015880
  • DOI
    10.14866/ajg.2005s.0.98.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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