教育におけるGIS/ARシステムの活用:―群馬県立前橋商業高校における室内型地域調査の実践― Utilization of Location-Based Augmented Reality (AR) Information System in School Education

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抄録

実践の概要  高等学校の地理A・地理Bには地域調査の単元があり,現地に出かけてフィールドワークを行なうことが促されている。しかし,実際に生徒を校外に連れ出すには学校長の許可や生徒の掌握・安全確保が必要であり,移動するにも時間がかかるなど,課題も多いのが現実である。ところが,ARシステムを利用すれば教室内にいても地域調査ができ,このような課題が解決できると考えた。  2015年1月に,群馬県立前橋商業高等学校2年生4クラス(1クラス約40名)を対象とした地理A「前橋市の地域調査」の授業の中で,ARシステムを援用した地域概観の把握を行った。具体的には,高校最上階7階の教室窓から眺められる高層ビルについて,その名称や用途・高さ・完成年等を位置情報型ARシステムにより調べながら,前橋市の都市構造の理解に努めた。4~5人のグループを作り,それぞれARシステムを備えたタブレット端末を使って課題解決に当たらせ,その後,グループごとに発表させて調査結果を全生徒が共有できるようにした。 この実践内容については,日本地理学会2015年秋季学術大会においてポスター発表を行ったが,2015年12月に授業内容をさらに改良し,今年度の2年生4クラスを対象としてARシステム援用授業を実施した。   生徒へのアンケート結果とその分析 授業後の生徒へのアンケート結果をまとめてみると,タブレットの操作方法については「よくわかった」という人が多い(1月77%,12月58%)。タブレットを使った授業が「おもしろかった」と答えた人も多いが(1月75%,12月61%),「普通」と答えた人も少なからずいた。これは課題内容が難しかったり,タブレットを実際に操作しない人がいたりしたためと考えられる。課題に対する解答が「すぐわかった」と答えた人は少数で,「難しかった」という人が多かった。グループ学習なので,難しめの課題設定としたことは確かである。前橋市の特色についての理解度は,「よくわかった」が約3割と少なく,「少しわかった」が6~7割と多かった。課題が難しく,1時間では時間不足であったためである。グループの人との協力については,約9割の人が「みんなで協力してできた」と答えたが,中には「みんなで協力したわけではない」という人も約1割いた。  1月と12月のアンケート結果を比較すると,授業内容を改良したにも関わらず,12月では全般的に評価が下がっている。その理由は,遠景を眺める場合には天気に左右されやすいこと(1月は晴天3クラス→12月は曇天4クラス),クラスによって生徒の特質が異なること,などが考えられる。しかし最大の原因は,12月では利用できる端末の台数に制限があり,グループ数を減らした結果,1グループ当たりの人数が6~7人と増えたことである。端末台数を十分確保し,端末1台当たり3~4人と少人数にすれば,全生徒が端末を操作して協力を深めることができ,より高い評価を得ることができると思われる。   ARの効果  ARシステムは野外調査で利用する方法が多くとられているが,今回の授業実践を通して,野外に行かなくても(できれば屋上や高層階の教室の窓から)学校の外を眺めることで,地域調査を行うことができることがわかった。野外調査の意義として「現地・現物を見る」ということがあるが,今回の授業でも高層ビルや景観の現物を見ているわけである。しかも前橋市を広い範囲で直接見ることができるため,都市構造を大局的に捉えることができる。そうした中,ARのもつさまざまな特徴(対象までの距離の表示,課題解決に必要な対象の詳細情報の表示など)を活用することで,聞き取り調査はできないにしても,それに代わる地域の情報を集めることができ,比較的短時間で手間をかけずに地域調査の授業を実施することができる。

収録刊行物

  • 日本地理学会発表要旨集

    日本地理学会発表要旨集 2016s(0), 100099, 2016

    公益社団法人 日本地理学会

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