ドイツ・ニーダーザクセン州における地理学習とESDの特徴

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  • Geographical Education and Education for Sustainable Development in Lower Saxony, Germany

抄録

ドイツ地理教育は、PISAショック以降、コンピテンシーに関する議論が展開した(Hemmer und Hemmer 2013)。2006年には、コンピテンシー志向の『ドイツ地理教育スタンダード(Bildungsstandard im Fach Geographie für den Mittleren Schulabschluss)』がドイツ地理学会(DGfG)によって刊行され、服部(2007)によってドイツの地理学力像が明らかにされた。しかしながら、コンピテンシーについては様々な議論や開発研究が展開されている。また州レールプランにおいて、コンピテンシーが設定される(Hemmer 2012)ものの、必ずしも『ドイツ地理教育スタンダード』が設定したコンピテンシーを全面的に反映しているわけではない。その中で、本研究の分析対象であるニーダーザクセン州ギムナジウム用のレールプラン『コアカリキュラム(Kerncurriculum)』では、『ドイツ地理教育スタンダード』の内容の多くが反映されている。この州の地理教育を分析することで、ドイツ地理学会が意図する地理教育・地理学習が、州レベルにおいてどのように具体化されたかを明らかにすることができる。また現代ドイツ地理教育が取り組むESD(持続可能な開発のための教育)に関しても、その具体的な目標、内容、方法を示すことができると考える。 本研究では、ニーダーザクセン州ギムナジウム用の地理レール、地理教科書(『TERRA』)の分析から、同州における地理教育とともに、持続可能な社会/ESDを視野に入れた地理学習の特徴について明らかにすることを目的とする。 『コアカリキュラム』では、「身近な、地域的な、グローバルな空間の全体像の発展、強化を保証すべきである」(2008, S.9)と示すように、地理学習では生徒の多様なスケールにおける地域・世界像の形成が目指されている。事例となる空間スケールに関しては、ドイツ地理教育の伝統である「近くから遠くへ(Nahen zum Fernen)」が採用されている。空間の観察方法に関しても、学年が上がるにつれて、空間を記述(空間をわかる)から議論(空間を説明する)、判断・評価(空間を形成する)へとより高次なものになっている。 また地理教科書『TERRA』は、ほぼ『コアカリキュラム』に対応した内容構成となっている。低学年では系統地理的なアプローチがみられる一方、高学年では地誌やその地域でのグローバル・イシューや持続可能な開発に関する問題に関する内容が多くを占めている。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205694912128
  • NII論文ID
    130007017604
  • DOI
    10.14866/ajg.2016s.0_100076
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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