EUにおける都市間競争激化に対応するウィーンの都市戦略
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- 大島 規江
- 国際教養大
書誌事項
- タイトル別名
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- Urban Strategy of Vienna
- Responding to tough competition among EU Cities
抄録
1. はじめに マス・ツーリズム進展の帰結として、ヨーロッパではツーリズムの多様化が進んでおり、従来の避暑・避寒を目的とする海岸あるいは山岳リゾート地への観光客流動に加えて、農村を着地とする様々なツーリズムの形態が展開されている。ルーラル・ツーリズム、フード・ツーリズム、ジオ・ツーリズムなどがそれらに相当し、多様化する観光ニーズに対応する新たなツーリズムの形態を提供している。加えて、有給休暇制度の整備・普及にともなって、1980年代初頭から再び都市観光が注目されている。実際、ヨーロッパ域内の国際観光流動の35%を都市観光が占めており、その伸び率は年平均4%で推移していることが報告されている。観光収入に占める都市観光の割合が大きいフランスを対象として、いかにリピーターを増やすかという点からの都市観光分析も行われている(Freytag, T. 2010)。EUの都市は変化の渦中にあり、観光資源化あるいは地域連携によっては域内の観光流動に劇的な変容をもたらす。 本研究は都市間競合が激化するEUのなかでもEUの東方拡大による観光流動の大きなうねりを受けるウィーンの都市観光資源化に着目したウィーンの都市戦略について報告する。 <br>2. ウィーンの観光客入込数 表1はウィーンへの来訪者の多い国別観光客入込数の推移を、1994年を1とした指標で示したものである。特筆すべきは、イギリスからの観光客が早い段階から劇的に増加していること、および国内からの観光客が激増していることである。宿泊に関する統計は、国内と国外からの観光客のニーズの顕著な差異を物語っている。他国からの観光客がウィーン市内のホテルに宿泊するのとは対照的に、オーストリアからの観光客はウィーン大都市圏内に分散して宿泊するほか、ホテル以外にも郊外のキャンプ場やホステルなどを積極的に利用している。こうしたウィーンを訪れる観光客の動向は、ウィーン市観光局が描く観光都市ウィーンの像と一致している。 <br> 3. ウィーンのブランド化 ウィーン市観光局が描くウィーンの観光資源は、?@ハプスブルク帝国の遺産、?A音楽と文化、?B文化と娯楽、?C機能性、?D都市と緑地のバランスであり、多様化する観光ニーズに対応するものである。先の国内からの観光客の激増は?Dの都市と緑地のバランスのとれた都市としてのウィーンの整備が着実に進展していることを示すものである。また、激しい都市間競争の下では、純粋な観光客ばかりでなく、国際会議などのビジネス・ユーザーを視野に入れ、その取り込みを可能とする?Cの機能的都市の創造による都市のブランド化という都市戦略が機能していることを示唆している。
収録刊行物
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- 日本地理学会発表要旨集
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日本地理学会発表要旨集 2011f (0), 100111-100111, 2011
公益社団法人 日本地理学会
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キーワード
詳細情報
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- CRID
- 1390282680672847872
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- NII論文ID
- 130007018120
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可