11年前に台風攪乱をうけた秋田佐渡スギ天然林はどのように変わってきたか? Change of structure of natural Cryptomeria japonica forest in Akita prefecture 11 years after typhoon damage

Access this Article

Author(s)

Abstract

1.はじめに 台風のような大きな攪乱は、森林に大きな被害を及ぼすが、そこでの更新を引き起こす要因にもなる。特に、大径木が林立する林分では、林床の光環境が大きく改変され、下層木の成長が促されて林分構造が大きく変わることが予想される。今回は台風被害をうけた秋田天然スギ林内で風害後10年間の林分構造の変化を調査した。2.調査地と方法 佐渡スギ学術参考林は森吉山の南東、ブナ森の南西斜面に位置し、標高約950mの台地上に広がるスギ天然生林である。主要樹種はスギ、ネズコ、ブナ、ミズナラなどである。スギの上木の樹齢は280年前後と推定されている。 この森林は1991年19号台風により大きな被害を受けた。林内には古い伐根が見られるが、近年の伐採の記録はなく、この被害は少なくとも数十年ぶりの大きな攪乱であると推察される。翌1992年に台風被害および植生回復の調査を行うため、1.05haの調査区を設定した。試験地内の胸高直径5cm以上の幹の胸高直径、位置を測定したところ、スギが胸高断面積比の70%近くを占めた。その後、1997年、2002年にも同様の調査を行い、立木の肥大成長、枯死、新規加入木(新たに胸高直径5cmを越えた立木)を各調査年で比較した。 この林内では1991年の台風被害は局所的なものであり、大きく被害を受けた場所とそうでないところが明確に分かれる。試験地を被害区(50m×70m)、対照区(100m×70m)に区分し、その後の林分構造の変化に違いがあるか、検討した。3.結果 この林内では1991年の台風により、胸高断面積合計の13%が失われ、スギが被害木の大半を占めた。 1991年に400本だった試験地内の立木は1992年に372本まで減少したが、1997年、2002年に519本、620本と推移してきた。樹種別ではブナが1992年から2002年の間に74本が新規加入し、13本が枯死し、123本から184本に増加した。その他の広葉樹も123本から298本(新規加入196本、枯死21本)と大幅に増加した。一方、スギは94本から101本(新規加入12本、枯死5本)と本数の増減がほとんどなかった。また、この10年で立木の樹種数も12種から17種に増加した。 一方、1991年に70.9m2/haだった試験地全体の胸高断面積合計は翌年61.9m2/haまで減少したが、1997年、2002年には62.4、64.5m2/haと増加してきた。この10年間の増加分は台風による損失の約30%であった。スギはこの10年間で1.9m2/haの増加となり、胸高断面積合計の増加分の71%を占めた。スギは本数はそれほど増加していないが、大径木の成長により胸高断面積合計を増加させていた。反面、ブナは胸高断面積を0.2m2/ha減少させている。これはブナの10年間の枯死木13本のうち、8本が胸高直径20cm以上であり、比較的太い立木が枯死していることによる。 被害区と対照区で、樹種ごとの新規加入木の密度、立木の死亡率、肥大成長量などを比較した。1992年から1997年の間のブナの新規加入木の密度が被害区で有意に高いという結果が得られたが、他に有意差が得られたものは無かった。ただし、ブナの林床稚樹の密度(樹高120cm以上)は、1997年の時点では有意差がなかったものが、2002年では被害区で有意に多いという結果が出ており、今後被害区で多くの新規加入木が見られることが予想される。

Journal

  • The Japanese Forestry Society Congress Database

    The Japanese Forestry Society Congress Database 114(0), 318-318, 2003

    The Japanese Forestry Society

Codes

Page Top