航空写真によるナラ類枯損被害箇所の自動抽出手法の開発

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抄録

カシノナガキクイムシが媒介するRaffaelea quercivoraが原因で発生するナラ類の集団枯損が本州の日本海側で進行している。森林内で広範囲の枯死木の位置を把握し、その分布を解析することは、効率的に防除対策を行う上で重要となる。これまで、航空写真を目視判読し、限定された領域の枯死木の位置を把握し位置分布の解析を行ってきたが、目視判読のみによる枯死木の識別には労力がかかるため、広範囲の解析を行うには現実的ではない。そこで本研究では、枯損被害箇所を自動抽出する手法を考案し、その抽出結果の検討を行った。枯死した個体は、萎凋症状が急激に進行するため、離層が形成されず、赤褐色に変色した葉は樹木に着生したままになる。したがって紅葉が始まる10月中旬までに撮影した航空写真を使うと枯死木の目視識別が可能である。本研究では2000年10月19日に撮影された、石川県刈安山周辺の航空写真をスキャナで読み込み画像化し使用した。本研究では枯死木の樹冠が赤系色であることを利用して枯死木の分類を行い位置を特定し、その後、特定された位置を始点として樹冠領域を算出することで被害箇所を抽出する手法を考案した。位置特定では赤系色領域を効率的に抽出するために通常のRGB色空間ではなく、色相(H)、彩度(S)、明度(I)で表現されるHSI色空間情報を用いた。考案手法では、色相と明度を利用して枯死木位置の特定を行う。また、上空から地面が直接見える道路・裸地周辺では枯死木に近い色の画素が存在している場合があるため、道路・裸地周辺の画素は枯死木候補から除外した。色情報より枯死木の位置を定めた後、その位置を始点として枯死木の樹冠領域を抽出した。樹冠領域抽出にはRGB色情報を元に樹冠を近似色円領域で表現する手法を利用した。分類・抽出の手順は次の通りである。1)RGB色空間の輝度値をHSI色空間に変換する。2) 色相と明度に閾値を定め、枯死木、健全木、道路・裸地に分類する。3) 枯死木と分類された画素のうち、道路・裸地周辺のものを除外する。4)枯死木と判定された画素を中心として近似色円を算出し枯死木の樹冠領域を算出する。以上の手順により枯死木の領域の抽出を行った。結果では、目視判読に比べ過検出が見られたものの、目視判読で見落としていた影領域周辺部の枯死木と思われる領域も抽出できていた。考案手法を用いた後、過検出箇所の除去を行うことにより効率的な枯損被害箇所の抽出が可能となる。

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詳細情報

  • CRID
    1390001205704987008
  • NII論文ID
    130007020340
  • DOI
    10.11519/jfs.115.0.p4002.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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