マウス融合卵を用いた精子染色体分析法の確立

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タイトル別名
  • A new method of sperm chromosome analysis using artificially fused mouse oocytes

抄録

【目的】精子の性判別、凍結乾燥および化学薬品による処理などの人為的操作は、精子染色体異常を誘起する一因である。そのため、精子を体外で操作する上で精子染色体のモニタリングは非常に重要であると考えられるが、家畜精子における安定した染色体分析法は未だ確立されていない。安定した染色体分析には体内成熟卵子、例えばマウス卵子の使用が望まれる。しかし家畜精子が持つ先体酵素はマウス卵子を変形させ、受精を阻害することが知られており、精子の染色体分析を困難にしている。本研究では、マウス卵子を人為的に融合し、体積を増加させることによる家畜精子染色体分析への効果を検討した。【方法】B6D2F1マウスから採取した体内成熟卵子にウシ精子を常法に従いピエゾマイクロマニピュレーターを用いて顕微授精(ICSI)した。ICSI後の卵子に1または2個のマウス卵子を電気融合させ、体積を各々2または3倍に増大させた受精卵(2倍卵および3倍卵)を作出した。ICSIから19-21時間目に卵子を漸進固定空気乾燥法で固定し、2%ギムザ染色液で10分間染色後、染色体分析を行った。【結果】卵子の融合率は、2倍卵と3倍卵で各々93%および91%であった。ICSI後6時間目の卵子の正常形態率は、対照区(1倍卵)で30%であったのに対し、2倍卵と3倍卵では各々84%および98%にまで有意に(P<0.05)増加した。2個のウシ精子を2倍卵にICSIした場合、卵子の正常形態率は38%にまで減少した。正常形態卵の内、第一有糸分裂期まで達した卵子の割合は、各々30%(1倍卵)、51%(2倍卵)および81%(3倍卵)となり、卵子体積依存的に増加した(P<0.05)。また、検出したウシ精子染色体は染色体分析に供試可能なものであった。以上の結果から、マウス融合卵を用いた染色体分析法はウシ精子染色体の検出に有効であることが確認された。また、精子先体酵素に対するマウス卵子の感受性は、卵子の体積に関係している可能性が示唆された。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680690510720
  • NII論文ID
    130007022100
  • DOI
    10.14882/jrds.102.0.1092.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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