ウシ未受精卵からの初期化因子の同定と体細胞核移植への利用

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  • Identification of reprogramming factor from bovine oocytes and application to somatic nuclear transfer

抄録

【目的】体細胞核移植によるクローン動物作出の成功により、体細胞を初期化する因子が第二減数分裂中期の未受精卵に存在すると考えられてきた。しかし,その分子機構及びその因子の同定は未だ不明である。本研究では、ウシ未受精卵からプロテオミクス技術を用いて体細胞の初期化に関する因子を同定し、それを体細胞核移植に利用することで発生能が向上するか否かを目的とした。【方法】20000個のウシ未受精卵から抽出したタンパク質を二次元電気泳動により分離し、特定のスポットのアミノ酸配列を初期化候補因子として同定した。得られた配列情報に基づいてcRNA、dsRNA、タンパク質、ペプチド、特異的抗体をそれぞれ作成し、強制発現や発現抑制実験によりウシ未受精卵における機能解析を行った。一部の未受精卵は、既報にしたがって体外受精や体細胞核移植を行い体外及び体内発生能を検討した。【結果】活性化刺激後5~6時間で劇的に消失するタンパク質リン酸化TCTPを初期化候補因子として同定した。特異的抗体を用いて出現及び消失時期を調べると二次元電気泳動の結果と一致した。卵成熟過程でTCTP-cRNAを卵細胞質へ注入してタンパク質を強制発現させるとMI期で停止したが、TCTP-dsRNAの注入によりmRNAを阻害してもMII期進行への影響がなかった。しかしながら、これらの卵を用いた胚盤胞期への体外発生能は、体外受精では影響がなかったが体細胞核移植の場合有意に低下した。次に、予めドナー細胞にリン酸化ペプチドを導入し体細胞核移植を行うと、体外発生能に影響はなかったが、受胚雌へ移植すると、導入していない同一の細胞を用いた結果と比較して,受胎率が向上し、流産率が低下するのみでなく、得られた個体全てが正常なクローン牛として分娩された。本実験によりウシ未受精卵から同定したリン酸化TCTPを核移植前のドナー細胞に予め導入することにより、未受精卵内で起こる体細胞核の初期化を促進する働きがあることを示唆している。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680691800704
  • NII論文ID
    130007023555
  • DOI
    10.14882/jrds.100.0.12025.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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