イヌ卵巣の超急速凍結保存の試み

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  • Cryopreservation of canine ovary by vitrification.

抄録

【目的】我が国の盲導犬実働数は現在約900頭であるが,盲導犬希望者は約4800人,潜在的希望者も加えると約7800人と推定されており,視覚障害者への盲導犬供給が十分になされていない。このような盲導犬不足の原因のひとつとして,盲導犬は雌雄ともに避妊・去勢手術を受けた後に訓練を開始するため,例え,その盲導犬が優秀であっても,次世代を残すことができないことにあると考えられる。そこで我々は,盲導犬から,次世代を得る方法のひとつとして,イヌ卵巣凍結保存法の開発を試みた。【方法】イヌ卵巣組織を1.5mm角に細切し,室温下の1M DMSOの中に60秒程度浸漬し,5µlの1M DMSOが入っているクライオチューブに組織を移し,氷上で5分間冷却した。次いで,あらかじめ氷上で冷却しておいたDAP213(2M DMSO/1Mアセトアミド/3Mプロピレングリコール)を95µl添加し,氷上で5分間平衡させた後,チューブを液体窒素に浸漬した。融解操作は次のように実施した。液体窒素からチューブを取り出し,キャップを除きチューブ内の液体窒素を捨ててから,室温で60秒放置し,37°Cに保温しておいた0.25Mスクロースを900µl添加して緩やかにピペッティングし融解した。融解後の組織は,PBIで5回洗浄し,HE染色によって組織学的に検査した。また,凍結融解卵巣を,NOD-SCIDマウスの卵巣嚢内に異種移植をし,4週間後,取り出した卵巣をHE染色およびPCNA(Proliferating Cell Nuclear Antigen)免疫染色によって組織学的に検査した。【結果】凍結融解後のHE染色による組織像は,すべてのイヌ卵巣組織において組織学的に正常な形態を示していた(n=30)。また,NOD-SCIDマウスへの異種移植の結果,イヌ卵巣の生着が18匹中17匹(94%)に認められた。また,PCNA免疫染色の結果,顆粒膜細胞にPCNA陽性が認められたことから,凍結融解後のイヌ卵巣が生存しており,その機能を発揮する可能性があることが示唆された。今後,同種移植を試みる予定である。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205715580672
  • NII論文ID
    130007023954
  • DOI
    10.14882/jrds.98.0.38.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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