台湾中小企業連携戦略の形成による産業クラスターの持続と進化

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  • The sustainability of Taiwan SMEs Cluster Based on Cooperation Strategy
  • タイワン チュウショウ キギョウ レンケイ センリャク ノ ケイセイ ニ ヨル サンギョウ クラスター ノ ジゾク ト シンカ

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抄録

<p>台湾の中小企業の多くはその成長と発展の過程で地域経済と結びつき、産業クラスターを形成してきたという経緯がある。その産業クラスターが生み出している部品取引の速さや生産効率の強さは、中小企業の輸出競争力の向上に助力していた。しかしながら、1990年代半ば以降、多くの台湾中小企業が労働力のコスト優位を求めるために、工場の中国への移転を進めてきた。これは、中小企業の町工場を中心に形成してきた産業クラスターの競争優位を弱めつつあった。それに加えて、中国地元企業が形成したローカル・サプライチェーンの台頭が進んでおり、台湾中小企業の輸出競争力の低下も起こしてしまった。その苦境を打破するために、2000年以降、台湾中小企業が様々な企業連携団体づくりを進め、市場ターゲットまたは生産品質の差別化によって新たな競争優位を確立しようとする動きが広がっている。</p><p>本稿の目的は、中小企業の連携戦略が産業クラスターの維持と進化を促進するプロセスにアプローチし、それによって台湾の中小企業の輸出競争力低下という現状を打破できる解決の方向を示すことである。本研究はポーターのダイヤモンド・モデルを用いて中小企業連携団体の三つの事例研究を行った。事例分析で明らかにしたことは以下の四点に集約できる。</p><p>第一は、企業連携団体の取り組みが地域中小企業の間の取引関係をさらに進化してより補完的な生産分業体制が構築できたことである。第二は、「製品の価値、品質、ブランドイメージの向上」、「共同学習の環境づくり」および「価格競争からの脱却」などの企業連携団体の運営成果が、団体会員間に共有されることに留まらず、周辺の中小企業、学術研究機関、地方行政機関にも拡散することである。このことによって産業クラスターの維持と進化という結果をもたらしているのである。第三は、企業連携団体の中核企業の経営者が自らキーパーソンであることに意識して、企業連携団体の企業メンバーの信頼基礎を固めようとすることである。それらの経営者は長期的視点に立って企業連携戦略の中身を見極め、中小企業の間の利害関係を調整することによって、信頼関係の深化と新たなビジネス・モデルの創造という効果が生まれてきたのである。第四は、企業連携団体が、企業が相互に学び知識を共有し合える連携活動を何回も催すことで、「目に見える学習と競争環境」を構築し、研究開発、生産、販売各方面での学習モチベーションを高めたことである。</p>

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