戦後台湾の日本語小説・黄霊芝「蟹」論

書誌事項

タイトル別名
  • A Study of Huang Ling-Zhi's “Kani”: The Figure of the Beggar as the Writer's Self-Portrait in a Postwar Taiwanese Novel in Japanese Language
  • 戦後台湾の日本語小説・黄霊芝「蟹」論 : 乞食に託された自画像
  • センゴ タイワン ノ ニホンゴ ショウセツ ・ キ レイシ 「 カニ 」 ロン : コジキ ニ タクサレタ ジガゾウ
  • ――乞食に託された自画像――

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抄録

<p>黄霊芝は戦後台湾において日本語による文芸創作を六十年以上続けてきた、「日本語世代」を代表する作家である。黄の代表作「蟹」は蟹を食べ、そして蟹に食べられるという乞食の顛末を中心に描き、生命の循環の歴史をテーマとして提示している。最終的に西方の海を目指して旅立つ乞食の道程は、死を代償とした自然への回帰であり、彼は生物として理想的な死を迎えた。しかし同時に、その乞食の像を戦後の政府によって虐げられ、政治の中心から追いやられた台湾人の姿の暗喩と見なすことができる。「蟹」は戦前戦後の政変による苦渋と忍耐のなかで生まれた黄文学の思想の核を知る上でも、戦後台湾であらわされた日本語文学の水準の一端を知る上でも極めて重要な作品と位置づけられる。</p>

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