細胞性粘菌の予定胞子細胞分化誘導因子の構造

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タイトル別名
  • An Alkylbenzoquinone Involved in Development of Cellular Slime Molds

抄録

<p>細胞性粘菌は,土壌中のバクテリアを捕食し生活する微生物で,その生活環は増殖ステージと分化ステージよりなる.増殖ステージでは,単細胞の粘菌アメーバが増殖を繰り返す.一方,餌のバクテリアがなくなり飢餓状態になると,約10万個の細胞が引き寄せられ集合体を形成し,予定胞子細胞と予定柄細胞からなるslugとなった後,それぞれ胞子と柄となり子実体を形成する (Fig. 1).このステージを分化ステージという.この分化の過程において単細胞が集合し,予定柄細胞に分化するための化学シグナルとして古くより知られている化合物としてはDIF-1 (differentiation inducing factor-1) (2)1がある.また近年弱い分化誘導活性がある化合物としてMPBD (4-methyl-5-pentylbenzene-1,3-diol) (3)2が単離された.これらの化合物はポリケタイド合成酵素によって産生されるという報告がなされている.細胞性粘菌のゲノムサイズは34 Mbであり,その中に40個以上のポリケタイド合成酵素遺伝子を持っていることが明らかにされている3,4.しかし,細胞性粘菌のポリケタイドとしては,これらの化合物の他にいくつかが報告されているのみである.これまでの研究で,細胞性粘菌Dictyostelium discoideum の培養液 (conditioned medium, CM) 中に予定胞子細胞を誘導する因子が高分子画分及び低分子画分に存在するという知見が得ていた.高分子画分得られた因子は糖タンパク質であり,y factoe (PSI-1)と命名した57.さらに,CMを透析することにより得られる低分子画分にも活性が見られるという知見に基づき,新たな因子を探索した結果,新規ベンゾキノン型ポリケタイドを単離し,dictyoquinone (1) (DQ)と命名した.本報では,その詳細について報告する.</p><p>Dictyoquinone (1)の単離8</p><p>D. discoideum V12M2 strain (wild-type)を23 °Cで振盪培養し,12–14 h後,得られた培養液(CM)をsyringe filter (0.45 μm)でろ過した.CMを遠心分離し,上清をAmberlite XAD-2樹脂に吸着させ,水,MeOH–H2O (9:1),アセトンの順で溶出した.それぞれの画分について,予定胞子細胞分化誘導活性を測定した結果,MeOH–H2O画分に活性が見られた.そこでこの画分をSephadex LH-20を用いMeOH–H2O (9:1)を溶出溶媒として分画した.各画分について予定胞子細胞分化誘導活性を測定し,活性の見られた画分を集め,ODSカラムを用いたHPLCによりさらに分画した.Sephadex LH-20分画において,活性画分は赤色を呈していたことより,HPLC分画においては,250 nmおよび500 nmでの検出ならび分化誘導活性との相関を検討した.その結果,500 nmの吸収を示すピークと分化誘導活性とは良い相関を示した.この活性画分をさらにC8カラムを用いたHPLCで精製することにより,dictyoquinone (1)を単離した.収量は培養液12 Lより<400 μgと極微量であった.また,得られたdictyoquinone (1) の予定胞子細胞誘導活性のhalf-maximal induction は26 nMであった.</p><p>Dictyoquinone (1)の構造9</p><p>Dictyoquinone (1)は高分解能ESI-MSよりC12H16O3の分子量を持つことが明らかとなった (m/z208.1084 [M], calcd. m/z 208.1099).1H NMRスペクトルでは,2個のメチルシ</p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288045052672
  • NII論文ID
    130007399498
  • DOI
    10.24496/tennenyuki.56.0_oral33
  • ISSN
    24331856
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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