11月初め頃における日本付近での冬型出現頻度の季節的増加と広域場の背景(1995年の事例を中心に)

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  • Seasonal increase in frequency of winter pressure pattern at the beginning of November and this environmental background

抄録

西高東低の冬型の気圧配置の出現頻度は11月頃から急速に増大することが知られており(吉野・甲斐, 1977 大和田, 1992),またより広域的な場でも,シベリア高気圧やチベット高原の南周りジェットが10月から11月頃にかけて強まる(ex. Matsumoto, 1988;垪和他, 2015地域地理科学会大会)。しかし,そのような広域場での季節進行と日々で見た日本付近の冬型の出現頻度の増大とが実際にどのように関係しているのか,詳細な季節遷移過程については必ずしも明らかではない。加藤・阿部(2001気象学会春季全国大会)は,1997/98年の顕著なエルニーニョ年には,日本付近での上述のような11月頃からの季節的移行がどのように阻害されたかを,冬への移行が比較的スムーズに起きた1995/96年と比較することで考察した。そこで今回,その結果の一部について解析をやり直し,さらに解釈を加えつつ11月頃からの冬型出現頻度の増大に関わる広域場の季節進行の背景について,考察を行った。なお,解析にはNCEP/NCAR再解析データを用いた。<br> 11月にはシベリア高気圧のみでなく,平均場のアリューシャン低気圧も強まる。ただし,日々で見ると,日本付近で強い南風の日も現れているものの,北風も数日~1週間程度の間隔で交互に現れるようになる。これは11月頃から冬型の気圧配置が,短周期の変動の一環として現れることに対応している。<br> 11月上中旬にはモンゴル付近から北日本へ向かって低気圧が発達・東進を繰り返し,その後面で寒冷前線が本州はるか南方(20~25N付近)まで南下するようになった。11月頃における日本海北部付近の海面気圧(SLP)や500hPa高度(Z500)他の日々の時系列の極小時を中心に,その前後2日間程度の時間経過について合成した場によると,東進する低気圧は傾圧不安定波の発達に対応したものと考えられ,北海道を過ぎた付近で最盛期を迎えていた。通過後はその後面での強い北風に伴う寒気移流域も本州南方付近まで広がっていた。つまり,10月上中旬と異なり,11月上中旬においては,モンゴル付近から北日本の緯度帯を東進・発達する低気圧の後面で,西方のシベリア高気圧との間の気圧傾度が強化されることに伴って冬型が強まる,というサイクルが繰り返されることが示唆される。<br> 11月上中旬にはモンゴル北部付近から北日本にかけて水平温度傾度が大きいゾーンが東進している。また,その傾圧ゾーンは日本付近では南方まで広がる大きな環境場を持っていた。11月上中旬の北日本を東進・通過する低気圧は,すでに発達しながら東進し,それが日本付近のより南方まで広がる傾圧帯に達することで,本州南方まで北風成分域が広がる低気圧としての発達が可能になったものと考えられる。また,11月に見られたこのような傾圧帯は,シベリア北東部が9月から11月にかけて急速に降温することで,10月には50~60Nを中心とする傾圧帯が本州南岸付近のものと合体して,日本付近で南北に幅の広いものとなる,という季節進行の背景にも注目する必要がある。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564237993412608
  • NII論文ID
    130007412030
  • DOI
    10.14866/ajg.2018s.0_000238
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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