被害防止対策から得られるデータを活用した兵庫県におけるツキノワグマ個体群の保全管理

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タイトル別名
  • Management of the Asiatic black bear population in Hyogo Prefecture using data provided from damage control measures
  • ヒガイ ボウシ タイサク カラ エラレル データ オ カツヨウ シタ ヒョウゴケン ニ オケル ツキノワグマ コタイグン ノ ホゼン カンリ

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抄録

絶滅が危惧されていたツキノワグマUrsus thibetanus 個体群の管理について、兵庫県では、農林業及び人的被害の防止・軽減対策ともに、絶滅を回避するための政策を盛り込んだ特定鳥獣保護管理計画が策定された。本論文は、これまでの保護管理の経緯、生息状況モニタリング、解剖記録およびそれらを活用した個体数推定の成果について報告する。兵庫県の管理計画では絶滅回避の対策として、有害鳥獣駆除の対象であっても初めて捕獲された個体と錯誤捕獲された個体は、すべて一旦マイクイロチップを挿入して放獣し、捕獲・再捕獲の履歴を記録した。捕獲・再捕獲記録とHarvest-based 法を組み合わせた状態空間モデルにより個体数推定を行った結果、兵庫県内の推定個体数は800 頭(中央値)以上となり、個体数が増加傾向にあることが示された。殺処分となった個体はほぼすべてが解剖され、年齢や繁殖状況が記録され、成獣メスの95%以上が隔年で繁殖していると推定された。この値は他の地域と比べても高く、個体数の増加傾向を支持した。こうした個体群モニタリングによって、個体数が回復し絶滅の危険性が低くなり、捕殺を最小限に抑える個体管理施策の成果が得られたと判断されたため、2016年には20年ぶりに狩猟が解禁された。今後、個体群データの充実にあわせ、個体数推定モデルの精度向上にむけた取り組みを行う予定である。

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