マウス脳におけるアリール炭化水素受容体の発現パターン

DOI
  • 木村 栄輝
    国立研究開発法人国立環境研究所 環境リスク・健康研究センター 日本学術振興会特別研究員PD 東京大学大学院医学系研究科
  • 前川 文彦
    国立研究開発法人国立環境研究所 環境リスク・健康研究センター
  • 遠山 千春
    東京大学大学院医学系研究科 筑波大学医学医療系

書誌事項

タイトル別名
  • Expression Pattern of Aryl Hydrocarbon Receptor in the Mouse Brain

抄録

<p>周産期におけるダイオキシン曝露が認知機能の障害や行動異常を引き起こすことが疫学研究ならびに動物実験から明らかにされている。さらに経胎盤・経母乳曝露を受けたげっ歯類の脳では、神経細胞形態や神経伝達物質受容体の遺伝子発現量の変化が観察されており、ダイオキシン曝露が正常な神経細胞の分化・成熟を阻害し、神経回路の構造的・機能的な異常につながると考えられる。ダイオキシンの受容体であるアリール炭化水素受容体(AhR)はリガンド依存的に核内へ移行し、標的遺伝子群の発現誘導を介して様々な毒性影響を引き起こす。また、線虫、ハエ、マウスなどを用いた実験から、AhRが神経系の発生・発達を制御していることが分かってきた。しかしながら、発生・発達段階の中枢神経系におけるAhRの発現パターンについては不明な点も多い。そこで本研究では、C57BL/6J系統マウスを用いて脳におけるAhRの発現解析を行った。最初に、生後3日目のマウスを用いて組織ごとのAhRタンパク質の発現量をウエスタンブロットにより比較した。その結果、肝臓や肺と比べて発現量は少ないものの、脳でもAhRタンパク質が検出された。次に、発生・発達段階を追ってAhR mRNAの有無をin situハイブリダイゼーション法により調べた。胎仔期12.5日目の脳では終脳の皮質深部に、生後3日目と14日目では海馬、小脳、嗅球においてAhR mRNAの発現が確認できた。海馬のCA1およびCA3領域では、上昇層や放線層と比べて錐体細胞層により多くのmRNAが検出されたことから、AhRが亜領域ごとに特異的な発現パターンを示すことが分かった。本研究結果は、マウス脳におけるAhR発現パターンを明らかにし、哺乳類の中枢神経系におけるAhRの毒性学的ならびに生理学的機能の解明につながる知見だと考えられる。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564238005239168
  • NII論文ID
    130007432499
  • DOI
    10.14869/toxpt.45.1.0_o-37
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ