神経行動毒性のメタ解析(その4):農薬のラットにおける急性毒性の性差に関する調査

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タイトル別名
  • Meta‒analysis in neurobehavioral toxicology (No 4): Study on the sex differences of acute toxicity of pesticides in rats

抄録

<p> 急性毒性試験は神経行動毒性の評価に有益な情報を提供する試験であるが、近年は動物愛護の観点から供試動物の性や数に配慮されている。例えば、OECDガイドラインは「原則として雌を用いる。これは文献調査から感受性に殆ど性差がないものの、性差が認められる場合には雌の方が一般的にやや感受性が高いことが示されているためである。雄の感受性が高いと判断される場合には雄を用い、その妥当性を示す。」ことを求め、動物数の少ない試験法を提示している。この性差に関する記述はLipnick 等の論文(1995)に基づいており、必ずしも我国の現状を反映したものではない。今後は片性の試験が増え、性差に関する情報は減少すると予想される。このような状況を踏まえ、本調査では上市された農薬原体についてラット急性経口毒性の性差について調査し、メカニズムに関する公知情報を調査した。</p><p> 初めに、毒性情報が公開された農薬について調査した。233剤のうちの230剤について急性経口毒性試験が実施されていた。雌雄を用いた試験は188剤あり、限界値(>2000 mg/kg等)や雌雄合わせたLD50が記載された剤を除いた85剤に雌雄別のLD50が記載されていた。平均のLD50は雄で1885 mg/kg、雌で1811 mg/kgであり、雌雄で近似していた。雌雄のLD50に隔たりがある(LD50の95%信頼限界の重なりがない等の)剤に14剤あった。このうちの10剤は雌に、残りは雄に感受性が高かった(有意差無し)。次いで、性差に関わるメカニズムを調査したが、これらの剤について性差を調べた報告は見いだせなかった。化学構造類似体について論文調査を進めており、当日発表する予定である。</p><p> 以上の入手可能な情報の調査より、農薬の急性経口毒性の強さに性差はほとんど見られず、性差が見られる場合には雌に高感受性を示す剤が多い傾向がみられるものの、雄に高感受性を示す剤もあった。性差のメカニズムを調べた報告は見いだせなかった。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763031526272
  • NII論文ID
    130007432723
  • DOI
    10.14869/toxpt.45.1.0_p-149
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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