教員養成系大学の家政教育における人権意識を高める授業デザイン

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タイトル別名
  • Class Design for Raising Human Rights Awareness in Home Economics Education of Teacher Training University
  • 教員養成系大学の家政教育における人権意識を高める授業デザイン : アセスメントのための指標に着目して
  • キョウイン ヨウセイケイ ダイガク ノ カセイ キョウイク ニ オケル ジンケン イシキ オ タカメル ジュギョウ デザイン : アセスメント ノ タメ ノ シヒョウ ニ チャクモク シテ
  • アセスメントのための指標に着目して
  • Focusing on Assessment Criterion

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抄録

【目的】<br> 現代社会において急速に進展しているグローバル化,情報化や技術革新は,人間生活を質的に変化させつつある。とりわけ,学校教育においては,様々な背景を持つ人々が互いを尊重しあいながら協働し,多文化共生社会を実現することが求められている。<br> 本研究は,これまで実施してきた共生・人の多様性理解を深めるユニバーサルデザイン(以下,UDとする)授業にアセスメントの手法を取り入れることで,教員養成系大学の家政教育における授業改善へつなげる示唆を得ることを目的とする。<br><br>【方法】<br>(1)授業デザインにおけるアセスメントのための指標作成<br> 『家庭科UD学習手引書』(以下,手引書とする)に基づく先行研究をふまえ,学修をより質の高いものにするという視点に立ち,共生・人の多様性理解を深め,人権意識を高める授業デザインを検討するための指標を作成した。具体的には,石森広美(2013)のアセスメント概念を参考に,従来のUD授業前後に実施してきた生活意識調査,UD知識調査,UD意識調査とその内容を,教員養成系大学における家政教育の果たす役割に焦点を当てて作り直した。詳細としては,ユネスコ総会において採択された宣言等や子どもの権利条約,障害者差別解消法,パートナーシップ条例など,大学生につけたい資質・能力を確認しながら,大分類名として「態度・価値観」「知識・理解」「行動」の3つを設定し,「態度・価値観」の中分類名として『自己理解』を,「知識・理解」の中分類名として『基本的知識』『制度的知識』を,「行動」の中分類名として『コミュニケーション(個人・協働)』『問題解決』『情報収集』を設定し,その内容も検討した。<br><br>(2)手引書とワークシートの加筆・修正<br> 作成した指標に従い,手引書の加筆・修正をした。<br><br>(3)調査方法<br> 修正した手引書による授業実施前後に指標の知識・意識調査を行い,授業直後にはワークシートに感想を記述させた。本研究では,記述内容を類似した回答ごとに分類し,数量的把握を行うことで学生の学びを探索的に求めた。調査対象者は,東北,関東,関西,中国,九州地方の教員養成に関わる国立・私立大学および短期大学の学生193名であり,授業実施時期は2017年6月~11月である。<br><br>【結果】<br> 学生の感想記述内容を先行研究で使用した分類名をもとに分析した結果,先行研究では分類名「発見(気づき)」「視野の広がり」「主体的行動」に関する記述割合が高かったが,本研究における記述は分類項目全体に散らばり,とりわけ「公平さ」の記述割合は15.8%から32.6%になった。また,「主体的行動」は一項目として捉えると割合が減少したように思われるが,結果全体を俯瞰すると,「応用する」の小項目『児童との関わり』に見られるように,学生は学校現場に出た時の自分をイメージしながら,児童とどのように関わりたいかを考え,『授業の工夫』に見られるように,多様な児童が教室にいることを想定しながら,どのような授業の工夫が必要なのかを思考し,『学習環境』に見られるように,教室あるいは学校全体に求められる環境整備に思いをはせた記述をしており,小項目3つの合計割合は0.5%から17.2%に高まった。つまり,「探してみたい」「共生社会が実現できるよう努めたい」といった行動から一歩踏み込んだ,より具体的な行動を記述していることが明らかとなった。<br> 参考:石森広美.(2013).グローバル教育の授業設計とアセスメント.東京:学事出版.<br> 本研究は,科研費基盤研究(C)17k04903の一部である。

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