特別支援学校高等部「家庭」における中・高接続に関する教師の課題意識

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Teachers` Problem consciousness of the connection from a junior high school in the home economics of the special support school to the high school

抄録

【目的】<br><br>特別支援学校高等部には、特別支援学校中学部だけでなく、中学校特別支援学級や通常学級と異なった校種から進学した生徒たちが在籍し、共に学んでいる。このことについて中央教育審議会答申においても「幼・小・中・高等学校と特別支援学校間での教育課程の円滑な接続」の必要性が強調されている。<br><br>特別支援学校高等部の家庭科授業では、地域の中学校からの進学者は「技術・家庭」、特別支援学校中学部からの進学者は「職業・家庭」「作業学習」「生活単元学習」等と異なった科目で履修した生徒が共に学んでいる。そのため、家庭科として小学校・中学校からの連続した学びを高等学校での発展的な学びに繋げることが難しい状況がみられる。さらに、特別支援学校高等部に在籍する軽度知的障害生徒数は増加傾向にあり、特に知的障害特別支援学校における家庭科において、多様な学びに対応する中・高の学びの連続性をどのように確保するかが緊急な課題となっている。しかし、家庭科の観点から校種間での学びの連続性に関して検討した先行研究は認められない。<br><br>そこで本研究では、特別支援学校における初等・中等教育をつなぐ学習の円滑な移行や接続を検討する研究の一環として、 特別支援学校中学部・中学校(特別支援学級,通常学級)と高等部の接続に関して、 特別支援学校高等部家庭科における教師の課題意識等を明らかにすることを目的とする。<br><br>【方法】<br><br>調査時期;2017年7月から9月<br><br>調査対象;全国の特別支援学校知的障害部門高等部Ⅰ類型の家庭科担当教員737名を対象として質問紙郵送法による調査を実施した。有効回収数は224名(有効回答率 30.4%)であった。その内訳は、女性182名(81.3%),男性29名(12.9%)であり、家庭科教諭免許と特別支援学校教諭免許を共に有していたのは108名(50.9%)であった。調査内容は、教師の基本属性,特別支援学校家庭科の履修状況、特別支援学校中学部・中学校(特別支援学級・通常学級)と高等部の接続状況などであった。<br><br>【結果】<br><br>1.特別支援学校高等部への入学者の割合は、地域の中学校(通常学級)からの入学者「1割以下」の学校が91.9%であり、特別支援学級からの入学者「8割以上」の学校が24.4%みられた。特別支援学校中学部からの入学者割合は「1割以下」の学校が21.2%みられた。<br><br>2.特別支援学校高等部入学前の家庭科履修状況の違いによる高等部家庭授業での困難状況について自由記述で訊ねた結果をKJ法によって分類すると、7つに大別された。<br><br>《学習履歴の相違による知識や技能の習得差による指導困難》(162件)では、中学校(部)での道具使用経験の差が基礎技能の習得差として生じ、同一教材での指導が困難であることや、学習内容の差を克服するための基礎学習時間の不足などの記述がみられた。また、生徒の障害状態や家庭での経験不足などによる多様性により《個に応じた支援困難》(17件)や、教師の指導意識の差が生徒の安全や衛生、危険の認知に差をもたらす《危険認知の差》(7件)などの記述もみられた。さらに、家庭科的な内容を日常生活面と関連付けて生活単元学習や作業学習で《合科による指導》(7件)をすることで意欲的な学習が可能であるが、家庭科の深い内容の学習は難しいという意見もみられた。一方で、《困難なし》は57件であり、具体的には、生徒に実態差があっても、個に応じた支援をして基礎・基本を繰り返し学習して定着を図っているため困難に感じないなどの記述がみられた。これは、生徒の実態把握が不可欠とされる特別支援教育においては、個々の学習履歴や到達目標の違いを前提として捉えられていることに起因していると考えられる。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564238023255936
  • NII論文ID
    130007474464
  • DOI
    10.11549/jhee.61.0_30
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ