免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)症例の骨髄組織におけるIL-17発現に関する免疫組織化学的検討

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タイトル別名
  • EVALUATION OF IL-17 EXPRESSION IN CHRONIC ITP USING IMMUNOHISTOCHEMICAL ANALYSIS
  • メンエキセイ ケッショウバン ゲンショウセイ シハンビョウ(ITP)ショウレイ ノ コツズイ ソシキ ニ オケル IL-17 ハツゲン ニ カンスル メンエキ ソシキ カガクテキ ケントウ

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抄録

免疫性血小板減少性紫斑病(Immune thrombocytopenic purpura:ITP)は網内系においてマクロファージによる巨核球や血小板の貪食・破壊が亢進することが主因とされている.近年,骨髄中の血小板産生段階にも異常があることが明らかになってきており,骨髄巨核球の障害や破壊がヘルパーT細胞の不均衡やインターロイキン17(Interleukin-17:IL-17)を産生するT細胞によって起こることが報告されている.しかし,骨髄を対象とした報告は少なく,一定した見解は得られていない.今回,慢性 ITP の骨髄病理組織(クロット)検体を用いて免疫組織化学(免疫染色)を施行し,治療開始前の骨髄巨核球の形態的変化とIL-17関連の免疫学的変化の有無を検討した.昭和大学病院において臨床的に慢性 ITP と診断された患者の治療前の骨髄病理組織33例を用いた.形態的変化はHematoxylin-Eosin染色を用いて観察した.抗CD3抗体,抗CD4抗体,抗CD8抗体,抗CD20抗体,抗CD25抗体,抗CD68抗体,抗CD163抗体,抗IL-17抗体を用いて免疫染色を行った.強拡大で免疫染色陽性細胞をカウントし,対照の骨髄浸潤のない悪性リンパ腫患者の治療前の骨髄病理組織11例と比較した.各例とも巨核球の形態異常や貪食像はみられず,血小板付着像にも明らかな差異はなかった.慢性 ITP の骨髄では,IL-17,CD68,CD163 免疫染色陽性細胞の割合が有意に増加し(P<0.05),IL-17陽性細胞の多くは,CD68やCD163陽性細胞の分布と一致していた.また,三者は各々正の相関を示した.慢性ITPの骨髄で単球やマクロファージは増加し,T細胞以外にIL-17を産生し分泌する可能性が示唆された.現在 ITP の診断に骨髄検査は必須ではないが,免疫染色を含む骨髄病理組織診断は慢性ITP症例の骨髄におけるリンパ球やマクロファージ・単球の動態やサイトカインの影響などの病態生理の解明において有用であると考えられた.

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