包丁操作時の学習者と熟練者の包丁運動データの比較

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タイトル別名
  • Differences the motion of kitchen knife between learner and expert during the operation

抄録

【目的】新規卒業の栄養士が職場で求められる技術に、材料などの切り込みなどに要する包丁技能がある。この技能は、定められたスケージュール内で、大量の食材を正確に処理するために必要となる。この技術そのものは、十分な調理経験を経ることにより、形はどうあれ身に付けることができる。しかし、近年では食生活の変化から、調理済みの食品を利用する機会も増えており、家庭での調理経験が少ない学生が、栄養士養成施設にも入学をすることも増加している。<br>栄養学は人体に関する健康科学的な学問であり、食品・調理に関する時間を多く取ることも難しい状況にある。その結果、近年では十分な練習時間を確保できないまま、就業先で技術不足に苦労をしている事例が散見されるようになった。 このような状況下において、技術向上を図る場合、的確な分析とそれに基づくアドバイスが必要と考えられる。そこで、本研究では学習者と熟練者の包丁技術の違いを明らかにし、練度を推定し、矯正を図る指標について検討した。<br>【方法】本研究では、包丁の柄の前後に6軸モーションセンサー(加速度・角速度)を取り付けた装置を作成し、キュウリの小口スライス中の動作を記録した。調査では、処理速度を競うものではないこと、およびなるべく普段の調理状態を記録したいことを被験者に伝えた上で、1 mm 幅を心がけて切断するようお願いをし、その切断操作を記録した。被験者は、学習者(学生)104名、熟練者(3年以上包丁を使う業務を主として行なっていたもの)18名を対象とした。<br>【結果】加速度の2次元プロットおよび角速度分布を確認した所、包丁を飛行機と見立てた場合、利き手が右手だと左ロール、左旋回、左手だと右ロール、右旋回をする傾向が認められた。これは、体軸に対して手首を内転しながら包丁操作をしている傾向にあることを示している。 この傾向は、学習者に多く見られており、熟練者ではほとんど見られなかった。熟練者では腕全体で包丁を利用することを心がけているために、手首を動かさないのに対して、学習者では手首の運動で操作をしているものと考えられる。 また、加速度の高速フーリエ変換(FFT)パワースペクトルは、熟練者では明確な倍音成分が確認できるのに対し、学習者ではあいまいであり、雑音成分が目立つ傾向にあった。つまり、熟練者は一定の軌道で正確に反復運動しているのに対し、学習者は軌道が一定ではないことが考えられる。 以上の結果により、本装置を用いて得られるロール・ヨーの傾向及び、FFTの雑音成分から、熟練度を測ることができる可能性が示された。<br>本研究はJSPS科研費 JP17K19942の助成を受けたものです。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763103794304
  • NII論文ID
    130007479148
  • DOI
    10.11402/ajscs.30.0_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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