抗HIV候補薬EFdAの効率的合成

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  • Efficient Total Synthesis of the Potent Anti-HIV Nucleoside EFdA

抄録

<p>【緒言】</p><p> 後天性免疫不全症候群 (AIDS) は世界的に問題となっているHIV(レトロウイルス)感染症である。現在,作用機序の異なる薬剤を併用する多剤併用療法(HAART) が行われており飛躍的な予後の改善が図られている。しかし生涯にわたる多剤併用療法は予期せぬ副作用の発現と多剤耐性ウイルスの出現という新たな問題に直面しており,新薬の創出と供給は創薬化学およびプロセス化学上,喫緊の研究課題である。</p><p> 近年4’-C-置換ヌクレオシドの特異な生物活性に注目が集まっている。4′-ethynyl-2-fluoro-2′-deoxyadeno- sine (EFdA, 1)は大類,満屋,ヤマサ醤油(株)の共同研究により創出された逆転写酵素阻害剤である (Figure 1)1)。近年,ヤマサ醤油(株)からメルク社(米国)へのライセンス供与が行われ,抗エイズ薬としての実用化研究が進められている。同様の作用機序を持つ代表的処方薬であるアジドチミジン(AZT, ジドブジン, EC50 = 22 nM, HIV-1NL4-3)等に比べ数百倍から数万倍という桁違いに強力なHIV複製阻害作用(EC50= 50 pM)を有することに加え,急性毒性を示さない(LD50 >100 mg/kg,マウス,p.o.),様々な耐性ウイルスに対しても有効である,長い血中半減期 (t1/2= 17.2 h) を持つ等の優れた特性から,極めて有望な抗エイズ薬候補と考えられている2)(Proc. Jpn. Acad., Ser. B 2011, 87, 53)。</p><p> 一方,本化合物の臨床開発における最大のネックは1の供給体制が十分でない点にある。既存の2つの合成法(大類法1),桑原法3))が知られているものの(Figure 2),原料価格,収率,立体選択性の点で問題を残していた。この様な背景の下,我々は真に実用的なEFdA合成法の開発に着手した。</p><p>【フラノース4位の新規増炭法の開発】</p><p> フラノース誘導体の4位を増炭する方法としては,安価で大量に入手可能なdiacetone-D-glucose (2)から5工程で得られるアルデヒド3をaldol/ Cannizzaro反応により4-ヒドロキシメチル化して4を得るMoffattらの方法4)が唯一の報告例であるが,生成する2つの水酸基の選択的保護に問題があった(Scheme 1)。</p><p> 我々は,3-ケトフラノース誘導体6とホルムアルデヒドとのアルドール反応について検討した結果,K2CO3やEt3Nを塩基として用いると4位の立体化学の反転を伴って,アルドール反応生成物 7とそれがホルムアルデヒドと過剰反応を起こした8の混合物が定量的に得られることを見出した(Scheme 2, Table 1)。</p><p></p><p> 8は報告例の少ないアセタール/ヘミアセタール連続構造を持つ新規糖誘導体であり,還元処理により7とともにアルコール9へ立体選択的に変換できた(アルドール反応完結後,濾過により塩基を除去し,濾液に水とNaBH4を加えることで簡便に四置換の4位炭素を持つ9を得る手法を確立した;白色結晶,100 g スケール,2から3工程,通算収率93%)。9の3位,5位および5’/6’位は選択的な修飾が可能であり,自由度の高い新規な四置換炭素含有合成ユニットになり得るものと考えている。</p><p>【水酸基</p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288074205440
  • NII論文ID
    130007491644
  • DOI
    10.24496/tennenyuki.57.0_posterp30
  • ISSN
    24331856
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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