環状扁平苔癬の1例:免疫組織化学的に環状になる機序を検討した

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  • Immunohistochemical Studies of a Case of Annular Lichen Planus to Explain Annular Formation of the Lesion

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抄録

70歳代,男性。2ヶ月ほど前から背部に痒みのある皮膚病変が多発した。個疹は直径数ミリの円形あるいは楕円形の平坦な色素沈着で,周囲は細く盛り上がる。組織学的所見から環状扁平苔癬と診断した。この症例に対し,免疫組織化学的手法を用いて HLA-DR,ICAM-1,CD1a,CD4,CD8 および Foxp3 分子の局在を調べた。HLA-DR と ICAM-1 分子は,細胞浸潤が少ないにもかかわらず表皮基底細胞の液状変性が明瞭に見える病変辺縁を超えて,正常に見える周辺部にまでしみ出すように陽性であった。一方,それらの分子は環状の病変の内部では急激に消失していた。Langerhans 細胞の量は炎症の強い部分と辺縁部で増加していたが,内部では正常部と同じ量に戻っていた。ヘルパー,細胞傷害性および制御性T細胞はいずれも炎症細胞浸潤部と辺縁部で基底細胞に付着してみられたが,内部では表皮から離れて分布していた。浸潤部と辺縁部における Langerhans 細胞の増加と内部での急激な正常化は HLA-DR と ICAM-1 分子の一過性の発現によるものと思われた。環状扁平苔癬の病変が環状になるのは,すなわち内部における細胞浸潤の消退と表皮細胞の回復は,Langerhans 細胞とリンパ球の浸潤に先駆けて病変周囲に拡大する HLA-DR と ICAM-1 分子の発現が,内部で急激に消退するためと考えた。(皮膚の科学,17: 181-185, 2018)

収録刊行物

  • 皮膚の科学

    皮膚の科学 17 (3), 181-185, 2018

    日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会

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