日本の大学における地理教育の現状についての予察的研究

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  • A preliminary research of geography education in Japanese universities

抄録

問題意識<br>演者らは、地理学アウトリーチフォーラム1)主催の交流会への参加やSNSを用いた他大学の地理学生との交流を通して、もちろん個人の特性もあるだろうが、所属大学によって地理学生の個性・特徴が異なることを肌で感じてきた。この理由は、3つ考えられる。1つ目は、現在の地理学は大きく人文地理学と自然地理学に分かれ、そこからさらに系統地理学に細分化している。そのため、現在「地理学」を満遍なく概観することはほぼ不可能となり、学生が把握できるのは細分化された系統地理学の方法論にとどまる可能性が高くなるという学史的問題からである。2つ目は大学入試制度の問題である。現在の入試制度によって学生たちは文理の選択を迫られる。このときに人文地理学と自然地理学のどちらを学ぶかがほぼ決まる。3つ目は、大学における地理教育制度の問題である。所属大学の教員の専門分野によって、その教員の持つ「地理学観」は異なるであろうし、あらゆるテーマを扱えるとされる地理学は、どのような単位を修得すれば卒業できるのかというカリキュラム面では非常に多様な履修体系が存在すると考えられる2)。したがって学生には多様な地理学意識が生じると予測する。以上の問題意識から、日本の高等地理教育の多様さ・複雑さを演者らは明らかにしたい。<br><br> <br>研究目的・意義<br>本発表では、地理学を体系的に学べる組織が設置されている大学のカリキュラムとその内容から各大学の地理教育の差異を比較することで、日本の大学において様々な地理教育が行われていることを概観する。この研究から得られる意義としては、進路選択時において地理学に関心を持つ中高生が地理学のどの分野を学びたいのか、ひいてはどの大学に進学すれば良いかの指針となることを期待している。また、学生たちが自大学の枠組みを超えて他大学の地理学(カリキュラム)の特徴を知る機会の創出や他大学で学べる地理学への興味関心の喚起につながり、学生間・大学間の連携や協同が進み、学生の学びが深まるきっかけを生むなど、今後の日本の地理学界の活性化につながると考えている。<br><br> <br>研究方法<br>地理学を体系的に学べる大学3)の悉皆調査は実施困難なため、今回はいくつかの大学に絞って調査を行い、予察的なものとして位置付ける。比較するのは、履修単位数、履修単位数における地理学科目の割合、地理学科教員の単位が占める割合、履修科目内容の特徴等である。当日の発表では、以上の分析結果とその考察についての報告を行う。<br><br> <br><br>注釈・参考文献<br><br>1)2012年に現・元国家公務員5名によって設立された任意団体。本団体主催で毎年地理系学生・社会人交流会が行われている。(野々村邦夫・三橋浩志2017. 月刊地理62(10). pp.6-11)<br><br>2)岡本耕平他12名2012. 大学地理教育における標準カリキュラムと学士力-現状とあるべき姿-. E-journal Geo 6(2). pp.203-211<br>3)地理学専門課程・教員養成課程をもつ4年制大学は2016年12月1日時点で95大学ある。(野間晴雄・香川貴志・土平博・山田周二・川角龍典・小原丈明2012. ジオ・パルNEO 地理学・地域調査便利帖[第2版]. 海青社. pp25-28)

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564238049698688
  • NII論文ID
    130007539736
  • DOI
    10.14866/ajg.2018a.0_107
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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