御嶽山による火山災害と王滝川水系 (長野県) のpH変化との関連についての検証,及びそれが地域社会の変貌に与えた影響についての考察
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- 村上 哲生
- 中部大学応用生物学部
書誌事項
- タイトル別名
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- Validation analysis of volcanic calamities from Mt. Ontake-san and pH fluctuations in the Ootaki-gawa River system, Nagano Prefecture, Central Japan, and its effects on local communities
- ミタケサン ニ ヨル カザン サイガイ ト オウタキガワ スイケイ(ナガノケン)ノ pH ヘンカ ト ノ カンレン ニ ツイテ ノ ケンショウ,オヨビ ソレ ガ チイキ シャカイ ノ ヘンボウ ニ アタエタ エイキョウ ニ ツイテ ノ コウサツ
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抄録
<p> 御嶽山の火山災害と王滝川のpH変動の歴史を記録文書から検証する。御嶽山はこの半世紀,二度の噴火や地震による地滑りを引き起こした。災害は,河川の水質や水棲生物,また地域社会に影響を与えたことであろうが,災害と環境変化との因果関係が十分に解析されてきたとは言い難い。<br> 御嶽山に発する濁川が噴火直後の降灰によりpHを下げたとの証拠は,過去の観測記録では確認されない。pH低下は硫酸を含む湧水の量や硫酸濃度が火山の活発化により増加したことによる。<br> 1984年の地滑りは濁川・伝上川合流点附近を埋めた。濁川下流では硫酸濃度が増加したがpHは上昇した。一次生産者の活性の増大や,災害復旧工事に大量のコンクリートが使用された結果として中性化の機構が働いたためであろう。<br> 濁川が流れ込む牧尾貯水池では噴火後にpHが低下した。低下は降灰の効果ではなく,湖底に堆積した火山噴出物中の硫化鉄が微生物により酸化されて硫酸を産生したためである。噴出物が大規模な降水の際に貯水池に流れ込むため,低pHが長期化したのであろう。<br> 二度にわたる噴火が御嶽山麓の王滝村に経済的な被害を与えることはなく,噴火後の人口流出も顕著ではなかった。1950年代からの人口減少は村域の生産的な部分を湖底に沈めた牧尾ダムの建設による。王滝村の衰微はダムが造られた河川に共通に見られる事例であり,火山災害が主因ではない。</p>
収録刊行物
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- 陸水学雑誌
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陸水学雑誌 79 (1), 19-39, 2018-01-31
日本陸水学会
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001288121164032
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- NII論文ID
- 130007585320
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- NII書誌ID
- AN0024866X
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- ISSN
- 18824897
- 00215104
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- NDL書誌ID
- 028897558
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- IRDB
- NDL
- Crossref
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可