真言宗智山派教師の「社会に向けた活動」と 「高齢者のケア」に対する意識

書誌事項

タイトル別名
  • Intention to social activities and aged-care among the priests of Chisan School of the Shingon sect
  • シンゴンシュウチサンハ キョウシ ノ 「 シャカイ ニ ムケタ カツドウ 」 ト 「 コウレイシャ ノ ケア 」 ニ タイスル イシキ

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抄録

    寺院活動の一つとして「社会に向けた活動」があるが、真言宗智山派は、教師がどのように「社会に向けた活動」に取り組むべきかを統一的に定めているわけではなく、それぞれの教師が自らの取り組みを決めている。<br>  「社会に向けた活動」への意欲や、重視されている活動を明らかにすることは、真言宗智山派の「社会に向けた活動」の基本的なデータとして必要になる。真言宗智山派では、昭和50年度より5年ごとに『真言宗智山派総合調査』を行っており、直近では、平成22年度に8回目の調査が行われた(1)。その結果は、真言宗智山派宗務庁によって『真言宗智山派の現状と課題』と題する報告書にまとめられている。「社会についての活動」については、「第3章 寺院活動の現状と問題点 第1節 寺院の諸活動とその意義」の中の「1社会活動・ボランティア活動」にまとめられている(2)。<br>  それによると、29.5%の教師が社会活動やボランティア活動をしていると回答しており、平成12年の15.7%から2倍に増加していると報告されている。また、74.2%の教師が「檀信徒のみならず、社会に向けた活動をしていくべき」と回答している。<br>  さらに、「活動していくべき」と回答した者が、「社会に向けた活動」として重要だと思うものとして「その他」を含めた10項目から3項目を選択する形式の設問に対する回答結果では、「生活の悩み相談(カウンセリング)」、「子供たちの情操教育」、「世代間の交流」に続いて「介護や死の看取りなどの高齢者のケア」は第4位であった。檀信徒への調査では、「生活の悩み相談(カウンセリング)」、「世代間の交流」に続いて、「介護や死の看取りなどの高齢者のケア」が第3位になっている。<br>  『真言宗智山派の現状と課題』は、「介護や死の看取りなどの高齢者のケア」を重要と思う教師が26.3%であったのに対し、檀信徒は38.2%が重要と回答している点を問題視し、「大きなズレがでた項目」であると指摘している。「特に死の看取りなどは教師に密接に関わってくる問題」として、警鐘をならしている(3)。平成22年の国勢調査で65歳以上の人口が23.0%を占め、その後も高齢者の増加が続いている我が国にとって、高齢者のケアは大きな問題である。「介護や死の看取りなどの高齢者のケア」にみられた「大きなズレ」について、ズレがどのような教師に生じているのかを明らかにする必要があり、必要に応じた適切な働きかけをするべきである。<br>  そこで、平成22年実施『真言宗智山派総合調査』の個票を二次的に解析し、「檀信徒のみならず、社会に向けた活動をしていくべき」と回答した教師としなかった教師の属性などの項目の違いおよび「介護や死の看取りなどの高齢者のケア」を重要と思うと回答した教師と回答しなかった教師の属性などの項目の違いを検討を行った。

収録刊行物

  • 智山学報

    智山学報 65 (0), 0205-0218, 2016

    智山勧学会

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