事業(規制)法に基づく行政上の諸規制と独禁法の適用関係論再考 ―電気通信事業法上のエンフォースメントと“競争余地”をめぐり

DOI

Abstract

<p>規制緩和・規制改革に伴い、電気通信産業などのいわゆるネットワーク産業では、独占的構造から競争的構造へと転換が図られた。このことは、電気通信事業法などの事業(規制)法が独占的に利用されてきたネットワークを第三者に開放することに伴い、さまざまな競争政策的規定が置かれてきたが、それと同時に、事業(規制)法では競争を制限する一定の行為に対する諸規制が設けられたことに現れる。</p><p>ところで、電気通信事業法などの事業(規制)法は、事業者に対する自由な経済活動を縛ることを含意するが、仮にそこに事業者の自由な創意工夫により何らかのビジネスモデルを創出できるのであれば、事業(規制)法には“競争余地”が存することを意味し、そこで独禁法が適用され得る何らかの競争制限的な行為が支配的事業者によってなされる可能性も考えられる。しかし、事業(規制)法の複雑な構造によって事業者の手足が縛られる結果、どの場合に競争が存するか(競争を阻害し得るラインがあるか)が不明確であり、そのために独禁法の適否を見出すことが十分に明らかにされない状態が生ずることになる。このため、両法が準備するエンフォースメントという側面において、そのタイミングや行政機関同士の組織的協力といった事実上の対応によってのみ、問題解決が図られているように思われる。</p><p>以上のような事業(規制)法と独禁法の現状に鑑みると、法治主義の観点からすれば、実定法規に照らしたうえで、事実上の対応とは別に法的安定性を模索すべきではないか。エンフォースメントが競争のダイナミズムを制約することには消極的であるべきだが、その分、権限が付与された行政機関に対する広範な裁量を認めることも、やはりコントロールされるべきであろう。そうであるならば、事業(規制)法の明文規定に照らし、いかなる場合に“競争余地”が存在するかを見極めることが重要と思われる。そこで実際、電気通信事業法と独禁法の適用関係が問題とされてきた判例・裁判例では、常に電気通信事業法の規制構造を踏まえたうえで、独禁法の適用可能性を見極めているように思われる。</p><p>そこで本稿では、かかる議論の前提には、行政上の諸規制があることに着目し、事業(規制)法(特に電気通信事業法)と独禁法の双方の適用関係性に係る解釈論の整理検討を試みる。</p>

Journal

Related Projects

See more

Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282763117927296
  • NII Article ID
    130007626756
  • DOI
    10.24798/jicp.1.2_15
  • ISSN
    24329177
    24336254
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
    • KAKEN
  • Abstract License Flag
    Disallowed

Report a problem

Back to top