福岡県福津市における地域包括ケアシステムにみるローカル・ガバナンスの変化
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- 杉浦 真一郎
- 名城大
書誌事項
- タイトル別名
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- Changes of local governance of community-based integrated care system in Fukutsu City, Fukuoka Prefecture
抄録
1.研究対象地域の概要と地域包括ケアシステムの類型的位置づけ<br><br> 福津市は,福岡市と北九州市の間に位置し,人口64,572,65歳以上人口の割合が27.8%(2018年11月末)の都市である。2005年に旧福間町と旧津屋崎町が合併した市内には,市街化された地域と農・漁村の特徴を持つ地域とがみられる。鉄道沿線の市南部で宅地化が進行中であるため,人口は増加している。<br><br> 福津市の地域包括ケアシステムは,2015年現在では,地域包括支援センターが1カ所のほか,サブセンターとしての在宅介護支援センター2カ所と,そのブランチとしての高齢者総合相談支援センター2カ所を設けていた。また,地域ケア会議は,市全域での開催だけでなく,日常生活圏域よりも小さい単位での開催も行われていた。しかし,2016年度から4カ所のサブセンター・ブランチが地域包括支援センター1カ所に統合された。このように福津市は,2015年度までは類型(2)-Cに該当したが,2016年度から類型(1)-Cへ移行している。こうしたことから,福津市の地域包括ケアシステムは,組織の体制を分権型から集権型へ変化させながらも,地域ケア会議の開催には重層性を維持するようなローカル・ガバナンスの変化を経験した事例と捉えられる。<br><br><br><br>2.福津市における地域包括ケアシステムの変化<br><br> 福津市では,2006年度の地域包括ケア導入の当初は,地域包括支援センターを市の直営としていたほか,合併前の旧2町ごとの在宅介護支援センターを相談窓口として位置づけていた。しかし,2010年度には,市の直営体制を廃止し,福津市や隣の宗像市で病院や老人保健施設等を大規模に運営する医療法人に委託した。委託へ切り替えたのは,直営では難しい3種類の専門職の確保が,1,000名を超える職員を雇用する当該の医療法人であれば可能だからであった。さらに,同じく2010年度に福津市では,地域包括支援センターの窓口機能を従来よりも増やし,住民の抱える様々なニーズを可能な限り地域包括支援センターにつなぐことを目的として,在宅介護支援センターのブランチとして高齢者総合相談支援センターという2カ所の窓口を新たに設置した。<br><br> しかし2016年度になると,それら計4つの窓口を廃止し,地域包括支援センター1カ所に統合した。これは,地域包括支援センターをはじめとして異なる3種類の窓口が混在する分かりにくさのほか,計4カ所のサブセンターおよびブランチでの機能的限界と相談件数の少なさを理由としたものであった。加えて,市域が比較的コンパクトであることも窓口集約化の背景として指摘できる。<br><br><br><br>3.福津市における地域包括ケアシステムのローカル・ガバナンス<br><br> 2016年度からの体制再編は,市全域のスケールのみを基本とする集権的なローカル・ガバナンスに様変わりしたかのように見えるが,集権性のみを志向した変化と断定することは適切でない。その理由は,第一に,地域ケア会議のうち,年間の開催回数が多く,個別ケースの相談から具体的な助言や対応方針の決定に至る実質的な役割を果たす「地域ケア個別会議」が,市全域よりも小さな単位で実施されていることである。第二に,地域包括ケアシステムにおけるローカルな取り組みが,市の総合計画で「郷(さと)づくり」と呼ぶ,おおむね小学校区の8地区を単位として実施されている点である。<br><br> 福津市における地域包括ケアの構築に関する今後の課題としては,5種類の地域ケア会議のうち,地域課題と施策の橋渡しをする重要な役割をもつ「地域ケア推進会議」が開催に至っていない点が挙げられる。このほか,市南部の都市化した地域と市北部の農漁村的な地域とが混在する中で,地域包括ケアに関して,地区ごとの多様性に応じたアプローチの重要性にも留意が必要であろう。
収録刊行物
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- 日本地理学会発表要旨集
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日本地理学会発表要旨集 2019s (0), 142-, 2019
公益社団法人 日本地理学会
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390564238096053504
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- NII論文ID
- 130007628390
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可