危機管理者の育成と運用に関する考察――米国の事例を中心に――

書誌事項

タイトル別名
  • A Case Study on Education and Use of Emergency Managers in the United States
  • キキ カンリシャ ノ イクセイ ト ウンヨウ ニ カンスル コウサツ ベイコク ノ ジレイ オ チュウシン ニ

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抄録

<p>米国において,危機管理とは応用管理科学である。第1に強調されるべきは管理機能であり,その行為者である「管理者」の育成と運用が危機管理の鍵とされている。その危機管理者については,大学院をはじめとする高等教育が充実化・長期化しており,それらを支援する研究開発が進められ,プロフェッション化が進んでいる。</p><p>今日,米国危機管理者の育成および運用は公共管理モデルに依拠するものであるが,これは,従来の実働機関モデルや国土安全保障モデルでは,対応重視型の危機管理になってしまい,統合や調整が強調されるべき地域全体の公共安全を俯瞰するリスクベースの戦略的計画を立案し実行することか難しいからてある。また,地域全体の公共安全を管理するために,多当局協働システムを採用し,ゆえに新たに必要とされた非技術技能教育の拡充も,高度教育プロジェクトとしておこなわれている。</p><p>すなわち,危機管理者の育成と運用の背景には,地方に危機管理部署を設置し危機管理者を配置するというだけでなく,公共管理モデルを採用したうえで,高度教育と研究開発を展開するという,政府による一連の戦略的な動きがある。今後,日本においても,地方の防災や危機管理を充実させていくためには,防災と危機管理の関係,その鍵となる管理者の職務や要件,彼らの職務満足を引き出す支援策なども含めて,中央レベルでその管理的側面が明らかにされる必要があるように思われる。</p>

収録刊行物

  • 公共政策研究

    公共政策研究 10 (0), 83-93, 2010-12-25

    日本公共政策学会

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