上顎中切歯萌出異常による慢性的な口唇粘膜潰瘍への対応に苦慮した9pトリソミー症候群の1例

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  • Treatment of Labial Ulcer Induced by Twisted and Delayed Eruption of Upper Right First Incisor in Patient with 9p Trisomy Syndrome:A Case Report

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抄録

<p>9pトリソミー症候群は低身長,小頭症,精神遅滞,言語発達遅滞,骨年齢遅延,手足の異形成,幅広い鼻根,高口蓋,口角下垂などを特徴とする染色体異常症候群である.今回われわれは,成人後に上顎右側中切歯が捻転した状態で遅延して萌出し,上口唇粘膜に潰瘍をきたした症例を経験した.本疾患のほかに偽性副甲状腺機能低下症があり,それによる影響と思われるエナメル質形成不全を認めた.他の口腔所見として高口蓋と上唇小帯短縮と肥厚,咬合異常,複数の過剰歯と埋伏歯を,また,全顎的に歯石沈着と中等度の歯周炎を認めた.歯科的治療方針として,潰瘍の改善の目的で,歯の形態修正による口唇との接触圧の軽減を第一とした.最終的には原因歯の捻転の矯正学的改善が必要と考えられた.歯科への受容を図るため脱感作法を主体としたトレーニングを実施したが適応行動は十分ではなく,グラスアイオノマーセメントによる歯冠形態の修正により歯と口唇との接触圧の軽減を図った.並行して介助者へのブラッシング指導も行った.潰瘍は改善と再燃を繰り返したが,側切歯と架橋させるような形態修正を行うことで症状は改善した.今後は定期的なフォローを行い,口腔衛生の維持と保全を図っていく予定である.</p>

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