チタン酸ナノシートの細胞毒性における小胞酸性化と液胞型ATPアーゼ依存性

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  • Cellular toxicity of titanate nanosheets attributed to vesicular acidification mediated by vacuolar ATPase

抄録

<p>チタン酸ナノシート(TiNS)はレピドクロサイト型結晶構造を持つ極薄のチタン酸化物であり工業利用が期待されている。近年、チタン酸化物ナノ粒子の毒性影響が報告されていることから、TiNSの毒性を危惧し調べたところ、ヒト単球培養時のTiNS曝露が巨大な空胞形成を先行する特徴的なアポトーシスを引き起こすことが分かった。TiNSは空胞内腔に存在し、空胞形成とエンドソーム経路が関連していた。そこでTiNSの毒性機序に細胞内膜系への作用が関与するとの仮説のもと、TiNS曝露下培養時の単球中のリソソームとオートファジーの解析を行いTiO2-P25ナノ粒子曝露時と比較した。両物質の曝露によりNBD-PZ染色で定量されるリソソーム量は増加したが、TiNS曝露7日後にはTiO2-P25曝露の5倍高値となり、TiNSが小胞酸性化を過剰に誘導していることが分かった。他方、TiNS曝露下ではオートファジーのnucleation, omegasome formation, elongationの各段階を担うATG101, Beclin-1, ATG9A, ATG3, ATG7, ATG12をはじめとする遺伝子の発現増加が見られ、オートファジーも亢進していることが分かった。オートファジーはオートファゴゾームとリソソームの融合で完了する。そこでTiNSの細胞毒性が小胞酸性化によるリソソーム過形成に因るのか、あるいは過剰なオートファジー誘導に因るのか調べた。液胞型ATPアーゼ(v-ATPase)阻害により小胞酸性化を抑制するbafilomycin A1はTiNS曝露下培養時の巨大空胞形成を抑制し、続くアポトーシスも抑制した。一方、オートファジーで働くPI3Kの阻害剤であるwortmanninはアポトーシスを誘導したがTiNS曝露時のアポトーシスを亢進も抑制もしなかった。また、bafilomycin A1はTiNS曝露によるヒト単球様細胞株THP-1の増殖抑制を一部回復させたが、wortmanninは細胞増殖を一層抑制した。以上の結果は、TiNSの単球への細胞毒性がv-ATPase依存性の過剰な小胞酸性化誘導に起因し、オートファジーには因らないことを示す。TiNS曝露影響への独立した応答としてのオートファジーの誘導が示唆される。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288152878848
  • NII論文ID
    130007677274
  • DOI
    10.14869/toxpt.46.1.0_o-21
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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