活性イオウ分子との反応を介したメチル水銀の解毒・排泄における反応中間体としてのイオウ付加体

DOI
  • 安孫子 ユミ
    筑波大学 医学医療系 筑波大学大学院 人間総合科学研究科
  • 片山 優助
    筑波大学大学院 人間総合科学研究科
  • 熊谷 嘉人
    筑波大学 医学医療系 筑波大学大学院 人間総合科学研究科

書誌事項

タイトル別名
  • The sulfur adduct as an intermediate of detoxication and excretion of methylmercury through interaction with reactive sulfur species

抄録

<p>【目的】親電子物質であるメチル水銀 (MeHg) は,生体内の求核置換基であるチオール基を有するグルタチオン (GSH) とMeHg−SG付加体の形成を介して解毒されることが定説である。一方我々は,そのpKa値から,GSH (pKa=9.1) より反応性が高いと考えられるH2S (pKa=6.8),イオウ原子が2原子以上連なるパースルフィド (H2S2やGSSHなど) やポリスルフィドのような活性イオウ分子とMeHgが反応して,ビスMeHgスルフィド [(MeHg)2S] を生成することを明らかにした。本イオウ付加体はMeHgを曝露した個体から同定されたこと,および精製した(MeHg)2SはMeHg曝露で見られるような毒性は生じなかったことから,(MeHg)2SはMeHgの低毒性代謝物の一つであることを示唆している。しかし,(MeHg)2Sの排泄経路等に関する生体内運命は未だ不明である。そこで本研究は,(MeHg)2Sのさらなる代謝物を検出することを目的とした。</p><p>【方法】(MeHg)2Sの分解:50 mMKpi (pH 7.5) 中に溶解した(MeHg)2Sを0~7日間静置した後,6 N HCl-ベンゼンで無機Hgと有機Hgを分離した。Hgは原子吸光分析法で検出した。揮発性Hgの検出:XAD-4に揮発性化合物を吸着させGC/MSで解析した。動物実験:(Me)2Hg, MeHgもしくは(MeHg)2SをC57BL/6マウスに腹腔内投与し,投与後2時間までの呼気を採取した。</p><p>【結果および考察】 (MeHg)2Sは経時的に減少し,一部は無機HgであるHgSおよび揮発性の高い(Me)2Hgに変換された。興味深いことに,(MeHg)2SもしくはMeHg投与マウスの呼気サンプルから それぞれ(Me)2Hgが検出された。以上より,生体内に摂取されたMeHgの一部は活性イオウ分子との反応で生じる(MeHg)2Sを経て (Me)2Hgに代謝され,呼気中に排出されることが示唆された。したがって,摂取されたMeHgは糞尿中に未変化体として排泄されるだけでなく,呼気からも(Me)2Hgの形で体外に排泄される可能性がある。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288153144448
  • NII論文ID
    130007677362
  • DOI
    10.14869/toxpt.46.1.0_p-192
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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