生物の磁場感受性と電磁過敏症

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タイトル別名
  • Magnetic sense of living organisms and electromagnetic hypersensitivity
  • セイブツ ノ ジバ カンジュセイ ト デンジ カビンショウ

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抄録

モバイル通信,無線LANなどが近年急速に普及している。一方で電磁場に起因すると思われる多種多様な症状(電磁過敏症)を訴える患者の数が増えており,両者に関係があるのではないかと考えられている。このような背景の下,国際非電離放射線防護委員会(International Commission on Non-Ionizing Radiation Protection; ICNIRP)は電磁場の安全性に関するガイドラインを設けている。しかしそこで示されている電磁場強度のレファレンスレベルは,物理学的・生理学的に確立した電磁波と生体との相互作用に基づいて設定され,電磁過敏症がみられるとされる電磁場の強さにくらべて3桁あまり高い。現状ではヒトがレファレンスレベルを下回るような弱い磁場を感じることはあり得ないとする見方が支配的であるため,この設定に疑問が呈されることはない。しかし一方では,細菌,鳥類,爬虫類,魚類など,意外と多くの生物種がレファレンスレベルより弱い地磁気を移動方向の制御に利用していることが解明されつつある。本解説では前半で電磁場の規制値に関してふれ,後半で研究の進んでいる走磁性細菌と伝書バトの地磁気感受性に触れる。さらに,マイクロテスラ未満の微弱な電磁場でも生体に影響するという,物理学分野で最近提案された理論の一端を紹介し,電磁過敏症との関連を議論する。

収録刊行物

  • 室内環境

    室内環境 22 (2), 209-215, 2019

    一般社団法人 室内環境学会

参考文献 (2)*注記

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