スポーツにおける脳振盪に関する共同声明 ─第5回国際スポーツ脳振盪会議(ベルリン, 2016)─ 解説と翻訳

DOI
  • 荻野 雅宏
    獨協医科大学 脳神経外科 日本脳神経外傷学会 スポーツ脳神経外傷検討委員会
  • 中山 晴雄
    東邦大学大橋医療センター 脳神経外科 日本脳神経外傷学会 スポーツ脳神経外傷検討委員会
  • 重森 裕
    福岡大学 スポーツ科学部 日本脳神経外傷学会 スポーツ脳神経外傷検討委員会
  • 溝渕 佳史
    徳島大学 脳神経外科
  • 荒木 尚
    埼玉医科大学総合医療センター 高度救命救急センター 日本脳神経外傷学会 スポーツ脳神経外傷検討委員会
  • McCrory Paul
    Florey Institute of Neuroscience and Mental Health, Heidelberg, Australia 5th international conference on concussion in sport
  • 永廣 信治
    徳島大学 脳神経外科 5th international conference on concussion in sport

抄録

<p>【解説】</p><p>「スポーツにおける脳振盪に関する国際会議」は2001年にウィーンで第1回会議が開かれたのち,近年は夏季オリンピックの年の秋に開催されており,第2回 (プラハ, 2004年),第3回 (チューリッヒ, 2008年),第4回 (チューリッヒ, 2012年) を経て,2016年にベルリンにて 「第5回国際スポーツ脳振盪会議」 が開催された。この国際会議の目的は選手の安全を確保することと,選手のコンディションを改善することであり,プロフェッショナル,アマチュアを問わず,スポーツで脳振盪を負った選手の状態を正しく評価し,安全にスポーツに復帰させることを目指すものである。さまざまな分野のエキスパートが討論を重ね,最終的に以下の共同声明 (consensus statement) を公開するとともに,声明の根拠となった系統的なレビュー12編24,25,i–x)を発表した。</p><p>脳振盪を負った選手を評価する標準的ツールSport Concussion Assessment Tool (SCAT),5歳から12歳までの小児に用いるchild SCAT,非医療従事者が脳振盪を疑う際に用いるConcussion Recognition Tool (CRT) はそれぞれ,SCAT5,child SCAT5,CRT5へと改訂された。</p><p>この共同声明 (McCrory P, Meeuwisse W, Dvoraket J, et al. Consensus statement on concussion in sport —the 5th inter­national conference on concussion in sport held in Berlin, October 2016. Br J Sports Med 51: 838–847, 2017) や上記のツールはすべてWeb上で自由に閲覧でき,ダウンロードも可能である。関係者は原文にあたり,その内容に精通していることが求められるが,一部から公式な日本語訳を強く望む声があり,本学会のスポーツ脳神経外傷検討委員会の有志が,前版xi)の訳者らとともにこれにあたった。</p><p>次回の改訂は2020年の秋以降に予定されているので,本稿が来る東京オリンピックならびにパラリンピックにおけるこの領域の基本的な指針となる。しかし本文中にもある通り,この共同声明は臨床的なガイドラインを目指すものでも,法的に正しい対処を示すものでもない。現時点における総論的な指針と考えるべきであって,個々のケースへの対応には,現場の裁量が認められていることを強調したい。</p>

収録刊行物

  • 神経外傷

    神経外傷 42 (1), 1-34, 2019-08-20

    一般社団法人 日本脳神経外傷学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845713087181696
  • NII論文ID
    130007691710
  • DOI
    10.32187/neurotraumatology.42.1_1
  • ISSN
    24343900
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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