子どもに対するEMDR 適用に関する文献的考察

  • 緒川 和代
    名古屋大学大学院教育発達科学研究科 地方独立行政法人 岐阜県総合医療センター
  • 松本 真理子
    名古屋大学心の発達支援研究実践センター

書誌事項

タイトル別名
  • LITERATURE REVIEW OF EYE MOVEMENT DESENSITIZATION AND REPROCESSING FOR CHILDREN AND ADOLESCENTS
  • コドモ ニ タイスル EMDR テキヨウ ニ カンスル ブンケンテキ コウサツ

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抄録

<p>昨今の社会情勢や自然災害の影響から子どもがトラウマを経験する可能性は高くなっており,子どもに対する効果的なトラウマ治療の研究が期待されている。しかしながらトラウマに対する治療としてWHOなどから推奨された治療法は「認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy,以下CBT)」と「眼球運動による脱感作と再処理法(Eye Movement Desensitization and Re-processing,以下EMDR)」(NICE, 2005;WHO, 2013)のみであり,子どもを対象とした治療法は決して多くないのが現状である。そのうちEMDRはFrancine Shapiroが1989年に発表した精神療法でありトラウマ治療の効果は認められているが,子どもを対象とした研究は多くはない。本論では子どもに対するEMDRの取り組みに関する文献展望を通して,海外での研究の現状と課題を把握するとともに,わが国における子どもへのEMDR適用に向けた課題について考察することを目的とした。</p><p>結果として,子どもへのEMDRに関する海外文献56編,国内文献32編を収集し,それらを効果研究,レビュー研究,事例研究,報告文献の4種類に分類したところ,海外文献においては効果研究が20編,レビュー研究が12編,事例研究が18編,報告文献が6編みられた。これらから,海外では子どもへのEMDR適用の効果が広く認められ,今後はより詳細に目的設定した研究の増加が課題であると考えられた。一方,国内文献では効果研究とレビュー研究が見当たらず,事例研究が9編,報告文献が23編であった。今後はわが国における子どものトラウマ治療としての信頼性を高めるために基礎研究および臨床研究の蓄積がともに重要であると考えられた。</p>

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